第27話、3番目の星

この赤ワイン、日本で飲むワインと全然味が違う。


美味しい。


日本で飲むと後味が変な苦味とエグ味があるのに、全然ない。


「これ、ボトルから飲むより全然美味しい」

「ワインが開くらしいです。開くって正直わかりませんが、先輩たちがやっていたのを真似してます」

「サイゼリヤのワインで充分かな、って正直に思っていたけど、本当に違うんだね」

「いや、サイゼリヤのワインとバローロが同列に語られたら、世の中の食通たち、全滅じゃないですか?」

「ぶっちゃけ、あの人たちってさ。うんちく語りたいだけじゃない?なんか。クルマのスペック厨みたいな気がするんだよね。乗ってから言えよ、ってこっそり思ってる。立場上、言えないけど」

「あー、まあクルマをカタログで語られると萎えます。乗らないのに言うな、と思いますけど、でもフェラーリとか乗れないので、カタログで語っちゃうんですよね」

「あー、わかる。カタログ読んで、あーでもない、こーでもないとか楽しいんだよね」

「それわかります。ま、お酒も同じじゃないっすかね?」

「本当に味が違うんだよね」

「赤道通るから変質するのかもしれませんね」

「じゃあさ、日本のワインってさ、輸入されたワインを目指しているからああいう味なのかな?こっちの方が全然美味しい」


2人であーでもない、こーでもないとうだうだ。


「くしゅん」

「あ、そろそろお開きにしようか。もう23時だし」

「えー、まあ明日もありますから、お風呂にしましょうか」

「たむくんからいいよ。俺片付ける」

「あ、やりますよ!」

「いいから。早く入っちゃって。アイテムボックスに入れたり、ゴミ捨てだけだから」

「すいません。じゃあ、お先にお風呂頂きます」


「ふう」


本当に綺麗な星空。

春の大三角形を見つけようと指を伸ばして、測ってみる。


獅子座から少し離れてアークトゥルスが見つかった。

瞬くアークトゥルスがとても綺麗に見えた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る