第14話、影から見た青い空

てくてく。パリッとしたTシャツにチノパン。

ふりふりと揺れる尻尾のたむくんの後ろ姿は、非常にかわいい。


「どうしました?」

「いや、この階段すごいなって」


成人に向かって「かわいい」なんて言ったらセクハラ案件だ。


でも感覚的に「どこでもいっしょ」とか「たまごっち」とか「あつまれど「あ、こっちです」「あ、うん」


美術館の回廊から見る空は影から見上げるからか、空が蒼いことがはっきりとわかる。


アーチ状の柱が写真のように画像を切り取っている。写真家のような気持ちになりながら、過ぎ去っていく。


柱の厚みや材質が青空と影をとても美しく彩る特徴的な空間に飾られたフレスコ画に、図書館と回ると、少し疲れてきた。でも、たむくんは元気いっぱい。なごむ。


「待ち合わせまではまだ時間がありますけど、どうしますか?あ、ここのタラペーストとシーフードフライはおすすめです」

「確かに小腹が減ってきたかも。シェアする?」

「そうですね。あとは少し先のパン屋さんですかね。そっちだと食べ歩きですが、待ち合わせ場所のラグーンの突端で食べるのもありっちゃありだと思います」

「うーん。疲れてきたから、店に入ろうか。日差しがつらい」

「あ、なら入りましょう。こっちです。Ciao!」


とっても早い。実は疲れてたのかな。

もう少し気にしてあげないと。たむくんはアテンドする立場だから、俺に言いにくいだろうし。


「あ、席空いてるらしいので、テラスにしました。何飲みます?」

「あ、じゃあコーラで。たむくんは?」

「俺もコーラにします」


プシュ!

「あー、これ、この瞬間のトキメキ感」

「期待値が最大になりますよね。俺はビールだと更に嬉しいです」

「あれ?お酒飲むんだ?」

「はい。来訪者様は呑まないんですか」

「あんまお酒強くないんだよね。あと「呑むと性格違うー」って言われたことあって、それ以来、ちょっと」

「あー、そういうのありますよね」


嫌なことを思い出してしまった。

人の気も知らないで言いたい放題。


「じゃあ、今夜、ホテルのバーとか行きますか」

「え?」

「俺もからみ酒ってよく先輩達から言われるんで、気持ちわかります。でも、俺は酒の友達です。いいじゃないですか、性格変わるぐらい。別に来訪者様が違う人になる訳じゃないんだし。言いたい奴らには言わせておけばいいんです!それにホテルならすぐに部屋戻れるのでいきなり性格変わって暴れても迷惑は掛かりません。ビールこそ、我らが血潮!」

「いや、暴れたりはしないと思うよ。それにイタリアだからワインじゃないかな」

「アルコールなら範疇内です」


「なら、今からうちのワインとつまみも一緒に如何?来訪者様に食べて貰いたいな」

「え、あ」


焼き立てのパンと油のいい香りと一緒に運ばれてきたタラペーストとオリーブオイルにバケット。シーフードフリットもバケツに入って、観光地感満載。


「食べて、美味しければお願いします」

「あれ?そんな勝ちが決まった勝負でいいの?うちのバカラマンテカートなら余裕だよ?」


ニヤニヤするウェイターさんとの勝負が始まった。


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