第13話、光揺れる海底
「あれ!あれ!ポストカードで見た!!」
「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂ですね。あの突端に行くまでの住宅地なんかはかなり濃いヴェネツィアの風景です。小さなタバコ屋とか小さな橋とか飾りや花壇も綺麗ですし、コーニッシュパイが名物のパン屋もありますよ」
「まだ、お腹は空いてないけど、地元民が行くところは気になる」
現在、鐘楼に登っている。
サン・マルコ寺院もよかった。宝石キラキラで天井画もキラキラ。聖堂内は全体的に青かった。差し込んだ光が反射して海の中にいるみたいだった。
「あれ、鑑賞スポット見逃した?もう一度観たい」
「一方通行なんで、入り直しですね」
工場のラインみたいに流れ作業だから、止まれない。アンドンが見当たらない。
仕方なく入り直したけど、ともかく人の流れが早い。もう少しじっくり見たかった。
でも、ゆっくり見れるからいい、という訳でもない。朝一の「観光スポット」もとい「教会」は怖かった。
「あ、こっちです。セントルチアのミイラがあるサン ジェレミア教会です」
「セントルチア?」
「ヨーロッパの光の聖女で、特に北欧で春の始まりを告げる5月1日の聖女です。ヴァルプルギスの夜って知ってますか?」
「同人ゲームとか、昔流行ってたのをやってました」
「たぶん、違うと思いますが、ヴァルプルギスの夜が清浄な光により浄化される、その日の聖女様です」
こじんまりとした教会。
殆ど人がいない教会の中は、思ったより木製で、奥の方に棺が置いてあった。
その中には真っ黒な「何か」が納められていて、今からデモンズソウルが始まりそう。濃い霧が世界を「どうしました?」おっと。
「あ、ううん。なんか聖女様っていうから凄く崇められているのかと思ってたけど普通なんだなって」
「まあ、まともに事績を見たら、単なる変人ですからね」
「うーん。でもさ、こうして教会あるし、その時代の人とか今は変人でも、未来の人とか、信じている人から見たら偉人ってあるあるなのかもね」
「確かに見る人によりますよね」
結構、罰当たりなことを話していたからか、外に出たら太陽が妙に暖かかった。ごめんなさい。心から謝罪する。
ほっと、一息ついて、振り返る。
「幻想的だね。なんかVRみたい」
って言いながら気がついた。
「そうですね」って頷く田村くん。
十分にVRだった。いや、現実だから単なるリアル。
違和感ないことにちょっと、驚きながらしおりに従って歩き出した。
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