第12話、スミレ色のコンペイトウ

202X.4.2(CET:中央ヨーロッパ時間)


見たことがない天井だ。

ここは「あ、おはようございます!」


めちゃくちゃ揺すられている。

3部屋あるメゾネットタイプのホテル。


部屋からはヴェネツィアが一望でき、素敵な夜景が楽しめる。


「ヴェネツィア内だと狭いですし、設備が古いです。外は設備と治安がいいですし、朝焼けは本当に綺麗です」

「お風呂ないの、本当に無理。だけど、ここすごいよね。お風呂と海が一体になったみたい」

「僕も初めてだったので、驚きました。星、綺麗でしたね」

「また入ろうかな」

「そうですね」


今、午前4時。まだ、眠い。

「ネスプレッソ淹れますね。最近はヨーロッパでもこのタイプはほぼ部屋に常設されているので、いつでもエスプレッソが飲めていいですね」

「日本の急須みたいな?」

「あ、そんな感じかもです」


ついでに買ってきておいたパニーニをビルトインオーブンで温める。


「温めすぎるとモッツァレラが溶け出すので、チーズは取り出して温めてください」

「はいよ。あれ?たむくんのピザは?」

「あ、一緒にお願いします。どのカプセルにします?」

「じゃあ、せっかくだから赤いやつで」

「ナポリですね。俺はじゃあ、せっかくなのでヴェネツィアにします」


ポメくんは要領よく、コーヒーを淹れながら買ってきたサラダを盛り付け直している。


お腹空かなくて、結局、お風呂入ってからレストラン行ったけど、ほとんど食べれなかった。朝食だけ貰って部屋に戻って睡眠。


さて、温め直したパンやピザを持ってバルコニーへ向かう。


「見てください!!流れ星!」

「ほんとだ!すっごい空きれー!何色っていうのかわからないぐらいにきれー!」

「日が出てきそうです。イタリアンオレンジ色ですかね?」

「え、じゃあ、こっちはなんだろ?濃い青色の食べ物、思いつかない」

あ、そういえば、ドイツ土産に貰ったスミレ色のお菓子があったな。


「あ、ある」

「とりあえず食べましょう」

「あ、うん。冷めないうちに食べよう」


2人でテラスのテーブルに座って朝食を食べる。「「いただきます」」


闇に落ちて、灯りがゆらゆらした街は、圧倒的な光により、照らされて、目覚めていく。


宗教画みたいな美しさ。

もうセフィロスが降臨してもおかしくない神秘さを感じてる。


「きれー、だね」

「うぐっ」

「あ、ごめん。気にせず食べてて!」


相槌を返そうとして慌てるポメくんを見ながら「世界の終わり」なんか、まだまだ勿体ないと思い直した。

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