第11話、影と追いかけっこ
「お腹いっぱいですね」
「ね。でも、美味しかった。お土産も買ったし。随分とおまけして貰っちゃったけど、よかったのかな」
「だから、嫌ならしませんから」
「来訪者だからさ。気になるんだよ」
「普通に気持ちよく食べていたからだと思いますよ?倒れて運ばれてますし」
「あ、お兄さんにも会えてよかったよ。悪いことしちゃった」
「その分、お土産買いましたし、良いのでは?気になるなら明日もまたいきましょう」
「そうだね。マリナレッサ庭園観る時に寄ろう」
だいぶお腹いっぱいだけど、ホテルに向かって散策すればお腹も空いてくるよね。
「田村くんはいつまでアテンドしてくれるの?」
「僕は日本からイタリアですね。ヴェネツィア、ミラノ、ボローニャ、モデナ、ローマ、パレルモ、ナポリ、ブリンディッシです。シチリアやサルディーナは詳しくないので、ご希望なら次のナビゲーターをお願いします」
「あの管理者とは連絡できるの?」
「はい。日報提出があるので」
「会社か!?あいつ、とりあえず明確化するのいい加減にしとけよ、て言っといて」
「え、あー、いや、さすがに言えないです。きちんとご褒美もあるので、悪くないですよ」
「まあ、あれはやってもらうイコール労力提供って考えだからやってマイナスにはしないだろうけど、嫌なら書いてね」
まだまだたむくんと一緒だとわかってホッとする。新しいナビさんがいい人とかわからないし。
「夜のヴェネツィアは幻想的だね」
「水面にゆらゆらと揺れている影がいいですよね」
「今の春もいいけど、カーニバルにも来てみたいな」
「ぜひ来てください。その時は僕もよろしくで」
「もちろんだよ。でも、何で?期末だし忙しいでしょ?」
「カーニバルの季節にホテルなんて取れませんよ」
「あー、まあそうだよねー」
仲のいい学校の後輩と旅行に来たみたいな感じで、他愛もない会話が楽しい。
見上げると、夢のような、日が沈んだのに、明るい空が浮ついた心を掻き立てる。
楽しそうで何よりです。
楽しいよ、ありがとう。
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