第10話、踊る夕暮れ

な、なんだろう。

もう、愛想尽かされたとか。う。また、か。

人に上手く説明できないのが、この世界でも発動してしまったのか。ああ、せっかくできたと


「来訪者様」

「なに?」


なんだろう。早く言って!?


「考えすぎですよ。別に言葉通りに受け取って、違かったら相手が言ってくれますよ。それより、このサワードゥのクレープにジャンドゥーヤを塗って、ラズベリーソースで巻くと美味しいですよ?」


たむくんから、はいって渡された生地はまだ温かかった。


少し、躊躇して、手元を見ていた。

なんか、俺、情け無い。


「はい。お待ちどうさま」

「あ、ども」


視界にミルクが入ってくる。まだ湯気が立っているたっぷりとしたマグカップ。


視線を上げるのが、ちょっと危ないけど、ぐっと力を入れて目を向けると、2人が楽しそうに会話してた。


「このソース、ラズベリーですよね?」

「うーん。惜しいわ。隠し味にカシスとルバーブが少し入っているの。だから添加物なしでジャムにできるのよ」

「つぶつぶは何です?」

「食感はブルーベリーを足しているの」

「エルダーベリーじゃないんですね」

「エルダーベリーだと種が多すぎて食感が

悪くなるから、入れるなら裏漉しになるの。そうするとペーストになっちゃうから食感の足しにはならないのよ」


「あら?さ、冷めないうちにどうぞ」

「あ、すいません。ありがとうございます」


たむくんが包んだクレープは酸味の強い生地なのに、ジャンドゥーヤの甘みをしっかりと支えて反発しない。香り高いジャムはつぶつぶな食感を足してくれる。


温かさが広がったままの食感にミルクを足しこむ。更に温かくなり、ジャンドゥーヤが溶けていく。


「ね?」

「美味しいですよね」

「うん。美味しい」


こっち見て、にこにこ笑っている2人。

うん。美味しいよ。とっても。

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