第4話、優秀すぎるナビゲーター
「大丈夫ですか?お疲れなら休みますが。まだ先方も来ていませんし」
「あ、いや大丈夫。ありがとう」
ポメラニアンのつぶらな瞳に映し出される俺は、案外かっこいい。
そう、何故か普通に喋るポメラニアンさん。今回のナビゲーター。
あの後、アイテムボックスやスキルなどを確認していたら入っていた「すず」。
鳴らすと適切なナビゲーターを呼んでくれるらしいので鳴らしたら、茶色い扉が出現。
どこでもドア!と思ったが、向こうから開いてやってきたのは「田村くん」。ポメラニアン族の方だった。
「あ、初めまして。田村と申します」
スーツ姿でデフォルメされた犬のような小柄な男性に名刺を差し出される。
普通にパジャマ着ていた俺は恥ずかしかった。せめて、服に着替えてからにすればよかった。
「どうぞ、お気になさらず。来訪者様。明日の朝にはイタリア行きの便を用意してあります。3時間前後の搭乗後、ミラノ到着でヴェネツィアまではタクシーを手配済みです。ご要望はありますか」
「あれ、なんでイタリア?」
「管理者からはじめはイタリアとかヨーロッパがいいとお聞きしました。お好きな漫画、映画、ゲームなどからヨーロッパの旅のプランをざっくり作りましたので、よろしければ」
「あ、うん。ありがとう」
ちらっと手に取れば、カラー印刷の分厚い冊子に工程表。俺の好みを抑えつつ、無理のない日程。アサシンクリードは2が1番好きだったからヴェネツィアスタートは適切だ。やるな、田村くん。
「これ、手作り?」
「はい。管理者から、僕が最初のナビゲーターだとお聞きしましたので気合いいれました」
「あ、座って」
「ありがとうございます」
田村くんから聞く限り、この世界には「管理者」がいる。管理者は普段、何があっても関わってこないけど、時折こうして「来訪者」をアテンドして欲しいとかお願いをしてくる。
「ナビゲーターになれるのは名誉ですし、お願いを叶えて貰えるので断る人はいませんけど」
「この世界はプログラムなのか」
「それは分かりませんが、少なくとも僕は僕の意思でナビゲーターになりました」
「あ、いや、ごめん」
「いえいえ。疑いますよね。僕らの世界でも管理者の存在などから、現実ってなんだろうってよく議論になるので」
田村くんの叶えたい願いは「玉ねぎが食べられるようになりたい」だった。
「種族的な問題はなかなかクリアできないので、嬉しかったです」
田村くん26歳と、イタリア旅行が始まる。
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