第十八話 ~対リターナー兵装~
「何故……お前が……?」
グッと拳を握り込み、莉緒は決意を固めた時と同じ冷たい声色で言い放つ。
「悪いな。見られた以上は殺す。まだ俺が露見するわけにはいかないんだよ」
「くっ……舐めるな‼」
男の手から雷電が走る。
本来、身体能力の向上以外は変化が起きないリターナーだが、政府関係者であるリターナーは万が一に備えた
目の前の男もその一人。
だが、それはあくまでもリターナーの取り決めが曖昧だったからこその基本出力であり、スペック上は一撃で相手を感電死させることも可能となっている。
莉緒が殴り掛かるよりも男の動きのほうが早かった。
それは単純に勢いをつけて殴る莉緒の予備動作と触れるだけで感電させられる相手の予備動作にかかる時間の違い故なのだが、それでも事実として男は莉緒よりも先に動いた。
「なっ⁉」
莉緒へと伸ばされていた男の腕が上へと跳ね上がる。
莉緒は動きを先読みし、殴ると見せかけ、男の肘部分を思い切り蹴り上げていた。
「
「なんなんだ……お前は一体なんだ⁉」
動揺した男の目の前で莉緒の体が浮かび上がる。
蹴り上げたことで片足立ちになっていた莉緒は、残った軸足だけで地面を蹴り、体を離陸させていた。
空中で体を捻り、鋭い蹴りが再び男にぶち込まれる。
ペットボトルの着弾で行動不能になった男がいたように、生身の人間よりも丈夫とは言え、リターナーの耐久力は無敵ではない。
リミッター解除中のリターナーの蹴りをもろに受ければ、当然ただでは済まない。
蹴りつけられた男は地面を転がり、咳き込みながら動けなくなる。
「もしも生き残って覚えていたら、まぁそん時は好きに恨んでくれ」
「ぐ……が、ぎゃあああああああああああああああああ⁉⁉」
コンビニの袋からゴム手袋を出した莉緒は、それを腕に付けると未だに雷電が走り続ける男の腕を掴んだ。
そして、動かせなくなっている指先が赤くなっている瞳へと潜り込むように、その腕を男の顔面へと押し付ける。
肉が焦げる臭いが僅かに広がり、悲鳴を上げていた男はやがて体を痙攣させながら静かになった。
──これで記録データは飛んだはずだ。人格が変わってる可能性はあるが、命があっただけマシだと思ってくれよ。
ペットボトルを腹に受けて、倒れていた男が意識を取り戻したのか僅かに身じろいだ。
顔を上げ、同僚が顔を焼け爛らせて倒れていることを確認する。
すでに瞳の色が戻っていた莉緒は、その男が倒れている男を回収することを期待していたのだが、怒りでこちらに向かってくるでもなく、男は怯えた様子でこの場から逃げようとする素振りを見せた。
「……ったく、殺す覚悟はできるのに殺される覚悟はないってか?」
再びリミッターを外し、足を踏み切る。男へ肉薄したところで側転でもするように手を地面に付け、逃げようとしている男の後頭部を蹴りつけた。
鈍い音と共に男の体がふらつく。
間髪入れずに今度は男の顎目掛けてもう一発。
再び地面に倒れ伏した男を冷めた目で一瞥だけし、莉緒は津羽音をぶん投げた噴水へと視線を移した。
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