第15話『ハート』
海で無駄な時間を過ごし、民宿に戻る頃にはもう夕方。バタバタお風呂入ったりしていたら、すぐ夕食の時間になった。
お風呂で見た無駄巨乳……。同じ人類とは思えない……。
テーブルの上には色々と料理が並んでいるけど、私にとっては食欲を刺激されないものばかり。
土地柄なのか魚料理が多くて、みんなはお刺身とか美味しい美味しいと言って食べてるけど、私はシーフードとか特別好きじゃない。カップヌードルがあればそれで良かったのに。
「海江さん、どうしたの?お魚美味しいから食べてみて!いつもカップヌードルばかり食べているんだから、たまにはちゃんとしたご飯を食べなくちゃ!」
水辺さんは無駄にハイテンション。出された料理に大満足しているらしい。
「海江さん、お料理どれも美味しいよ〜?せっかく民宿へ泊まりに来たんだから〜、その地域の美味しいご飯を食べないともったいないよ〜?」
御國さんは食べ物であれば何でも良いんだと思う。まぁ、言ってることは理解できるけど。
とりあえず、軽いお付き合い程度なら箸をつけてもいいかなぁ……。お刺身食べるなんて随分と久しぶりだ。
何て言う魚か分からないお刺身を一切れつまみ、軽く醤油をつけて口に運ぶ。ワサビはつけない。
うん……、悪くはない。身がプリっとしているから、たぶん新鮮なんだろう。これなら食べられるかな。想像したよりは大分マシ。
「美味しい……かな?」
私がそう言うと、何故かみんな満足そうな顔をする。
「良かったわぁ〜♪海江さん、お刺身以外も美味しいですから、どんどん食べて下さいね。たまにはこういう食事も良いでしょう?」
緑川先生からそう言われたけど、まぁ……、私的にカップヌードルが主食であることは変わらない。他に選択肢が無ければ食べてもいいって程度。
「ご飯食べたら海岸で花火やろうね!私たくさん買ってきたから!打ち上げ花火もあるよ!」
水辺さんはそう言うけど、今度は花火?プログラミングの勉強はどこへ行ったのよ?合宿の目的はどこへ行ったのよ!?
夜の海岸は人も少ない。波打ち際を歩いている人もまばらで、昼間の賑わいが嘘みたい。
「さぁ、準備はいいですか〜?花火大会の始まりだよ〜!」
ご機嫌な様子でそう言う水辺さんだけど、この人は何でいつも、こんなにテンション高いのだろう?無駄でしかない。
「花火なんて久しぶりだな〜。水辺さん、レシートは取ってある?後で僕もお金払うよ」
多田さんは、こんな時でも真面目。水辺さんは花火を大量購入したみたいだけど、一体いくら使ったんだろう?花火なんて最後には燃えカスしか残らないんだから、無駄でしかないのに。
花火かぁ……。小さい頃に家族で花火大会を観に行ったことはあるけど、こうして一般のお店で売ってるような花火をするのは初めてだ。
最初に主催者の水辺さんが花火に着火。先端からジワジワと炎が燃え伝わり、堰を切ったように火花を噴き出した。
赤・青・黄・緑、カラフルな火花を勢いよくロケットエンジンみたいに噴いている。
他のみんなも次々と花火に火をつける。それぞれが持つ花火がカラフルな火花を噴き出し、一気に夜の砂浜が明るく照らされた。
「海江さんも早く早く!せっかくだから、みんなで楽しまなくちゃ!」
水辺さんがそう言って、花火の束を私にも押し付けてきた。本当にメンドクサイ人だ……。
とりあえず、適当に一本選んで火をつけてみた。みんなのと同じように、カラフルな火花が勢いよく噴き出される。
うん、まぁ綺麗だとは思う。でも、何が楽しいの?みんな笑顔で楽しんでいるみたいだけど、意味が分からない。
花火なんて単に、火薬を燃焼させることによる炎色反応でしかない。色の違いは化合物によるもの。
そして燃焼が終われば燃えカスが残る。無駄でしかない。
「海江さん、見て見て!ホラ、こんなこともできるんだよ!」
水辺さんは私達から少し距離を取って、両手に持った花火を振り回している。危ないなぁ〜……。高校生にもなって、この人は一体何をやっているのよ……?
私は呆れてしまったんだけど、伽羅さんが横から解説してくれる。
「フフフッ、海江さん分かる?水辺さんの動き。ホラ、両手の花火で何かを描いているでしょう?」
そう言われたけど、何のことかすぐには分からなかった。何かを描いている……?
あ……、そういうことか。
「もしかして、花火でハートを描いているんですか……?」
何か一所懸命に花火を振り回しているけど、確かに水辺さんは、火花で空中にハートマークを描きたいように見える。
くだらない……。高校生にもなって、何をやっているのよ……。この人は本当に上級生なの?馬鹿馬鹿しい。
でも何故か、自然と笑っちゃった。何でこの人は、こんなくだらないことを一所懸命やっているんだろう?って。
分析できる程に深く交流していないし、別に知りたいとも思わないんだけど、まぁ、悪い人じゃないとは思う。
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