第14話『合宿』
夏休みに入った。期末テストも楽勝だったし、一学期の成績も問題無い。宿題はあるけど大したボリュームじゃないし、私ならすぐに片付けられる。
個人的には夏休みを有意義に過ごすべく、エアコンの効いた自宅でのんびりとダイアナのチューニングでも進めようと思っていたのだけど、無駄巨乳からAI研究部の合宿に参加しろと言われてしまった。
AI研の夏合宿って、一体何をするっていうのよ?必要性皆無だし、意味が分からないんだけど?
目的地は海に近い民宿だとかで、無駄巨乳が無駄金使って無駄レンタカーを借りて無駄に安全運転で移動する。まぁ、安全運転は無駄じゃないけど。
みんな暇なのか部員は全員参加で、ワゴン車の中は無駄に賑やか。水辺さんはいつも通り無駄にハイテンションだし、御國さんは無駄にお菓子を食べている。
多田さんと伽羅さんは三年生だし大学受験とかあるはずなのに、こんな意味不明で無駄な合宿に参加するほど余裕あるのかなぁ?
まぁ、伽羅さんは優秀過ぎる人だし、大学ぐらい余裕で推薦を受けそうではある。
「先生!目的地まであと何キロですか!?何分かかりそうですか!?」
水辺さんが鼻息荒く、そう質問した。
「そうですねぇ〜……、今日は渋滞してないですから、あと一時間もかからないと思いますけど……。皆さん、お手洗いとかは大丈夫ですか?途中どこかで休憩しましょうか?」
まぁ、所要時間は私も気になる。出発前にトイレは済ませたし、飲み物も用意してあるから休憩する必要は無いけど。
合宿の予定としては、二泊三日で集中的にプログラミングの勉強をやるんだそう。勉強なんて、それぞれ自分のペースでやればいいのに、何でわざわざ合宿する必要があるのよ?
私は自宅でコーディングするのが一番効率良いって分かっているし、他の人の面倒見てあげるのは嫌なんだけど。参加する必要性あるのか、疑問でしか無い。
移動中コンビニの休憩で、パリピ水辺さんが無駄にはしゃいで面倒くさかったけど、どうにか事故らず無事に目的地へ到着。正直ホッとした。
何か、いかにも安そうな古びた民宿。夏休みシーズンだというのに人の出入りが全然無いし、他にもお客がいるのかどうか疑わしい。予算ケチったんだと思う。
ここってちゃんと、ネット環境あるのかなぁ?何か不安になるくらいにショボい民宿なんだけど。
無駄に愛想の良い女将さんに案内され部屋へ通されると、まぁ予想通りの和室で無駄に広い。中央を襖で区切られる二部屋分を予約したんだとか。
一応確認すると、民宿全部屋にLANは引かれているというので、ちゃんとネットには繋がるみたい。Wi-Fi環境も用意されている。
ネット環境はいいとして、PCの電源足りるの?最低でも五人分、5口必要なんだけど、部屋中探しても4口しか無いじゃないの。
「先生……、この部屋、電源足りなくないですか……?」
緑川先生に尋ねると、全然焦った様子もなく暢気に答える。
「電源なら大丈夫ですよ。先生、電源タップとか色々持ってきましたから」
そう言って、緑川先生は自分の荷物をガサゴソと漁り始める。
まぁ、そのぐらいは想定内ってことか。ちゃんと準備はしているのね。そう思ったんだけど、次の言葉で呆気にとられた。
「あら……?まぁ……、先生間違えちゃいました……」
そう言ってカバンから取り出したのはゴムホース。
はぁ……?イヤちょっと待ってよ、何をどう間違えたらゴムホースなんか持ってくるっていうの!?それ、電源タップのつもりで荷物に入れたの!?
結局、ゴムホースなんかあってもどうしようもない。民宿の人に頼んで延長コードや電源タップなんかを貸してもらうことに。
まぁ、完璧とは言えない環境だけど、最低限必要なものは揃ったからいいか。あぁ、メンドクサイ……。
とりあえず自分のPCを立ち上げようかと思ったら、何故か水辺さんが、人目も憚らず唐突に脱衣。
「ジャジャーン!私、今日は服の下に水着を着て来ましたッ!みんなも早く早く!せっかく海に近い民宿なんだから、早く着替えて海に行こうよ!」
そう、鼻息荒く捲し立てる水辺さん。イヤ確かに海に近いし夏休みだし、でも、そこまで無駄に張り切らなくてもいいでしょ?そもそも、私は水着なんか用意してないし。
合宿の目的自体プログラミングの勉強ってなってたはずだけど?二泊三日の予定で、暢気に海水浴とかしてる暇は無いでしょ?時間の無駄でしかない。
結局、多数決で先ずは海水浴ということに。はぁ……。何の為に合宿してるってーのよ……。
私以外はみんな海水浴も予定に入れていたらしく、ちゃんと水着を用意しているし……。
水着が無いから私はいいって言ってるのに、ビーチへ強制連行。無駄巨乳まで無駄に張り切っちゃって、意味が分からない。
海水浴とか、何が楽しいの?砂浜を歩くのも海水に浸かるのも、体が汚れるだけで不快でしかない。
一応、私も人並みに水泳ぐらいはできるけど、だからといって海水浴には楽しめる要素が微塵も見当たらない。泳ぎたいならプールへ行けばいい。
とりあえず砂浜にレジャーシートを広げて、みんなの荷物番ということに。直射日光がキツイのでビーチパラソルを借りてきた。これで少しはマシ。
みんなが波打ち際で、水を掛け合ったりしてはしゃいでいるのを遠目に眺める。高校生にもなって、そんな遊びの何が楽しいのよ……。メンドクサイ人達だ……。
何もせず時間を潰すのも無駄なので、スマホでダイアナと会話。
「ダイアナ、今日この地域の天気予報は?」
「気象庁によりますと、快晴です。降水確率は0%ですね。アイは屋内で過ごす時間が長いですから、少し外出する機会を増やしてみてはいかがでしょう?」
ダイアナはいつも通りに笑顔で返答するけど、余計なことは言わないでほしい。まぁ、私が自分でパラメーター設定したんだけどさ。
「ダイアナ、今いる地域ってどんな所なの?」
試しにそう質問してみたけど、ダイアナは即答する。
「この付近は海水浴場と別に漁港がありますので、海産物が名物となっているようですね。魚の干物が名産品として人気のようです。寺社仏閣なども観光目的とされていますよ」
ふーん。まぁ、興味無い情報。聞く必要は無かった。
ダイアナと会話して時間を潰すしかない状況だけど、調べたいことがあれば普通にネットで検索してやれば済む訳だし。無駄な時間だ……。
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