第2話 来訪者
年月は流れ、桃太郎は十三歳になりました。
桃太郎はお乳を飲んでいる間はおみつさんの所で育てられ、その後お爺さんお婆さんの所で育てられました。
大きくなったら畑を手伝いをし、お爺さんと一緒に柴刈りにも行く、優しくて逞しい男になりました。
桃太郎は自分の生まれた時のことは幼い頃から聞かされて両親がわからない事を知っていましたが、それで悲しく思うことはありませんでした。
それだけ村のみんなが桃太郎を大事に育てていたからです。
「桃太郎は赤ん坊の時に何故あのような形でこの村に来たのか解らない。将来何かに巻き込まれるかもしれないから、それに対抗できるように体を鍛えておかないといけない」
お爺さんはそう言って、桃太郎に刀の使い方など戦い方を厳しく教えました。
ところが戦い方を学んだのは桃太郎だけではありません。
小梅はおみつさんの娘です。桃太郎はおみつさんのお乳で育ちましたので小梅とは乳姉弟となります。
桃太郎は刀が得意なの対し、小梅は短弓が得意になりました。
ある日、畑仕事をしていたら桃太郎は足を引き摺りながら歩く男が村にやってきたのに気付きました。
その男は
お爺さんを訪ねて来たというので大声でお爺さんに声をかけたらお爺さんが来ました。
「お久しぶりです。師匠」
「お前は信広か!どうしたんじゃその傷は?」
「はい。鬼どもと戦ったんですが、御覧の通りです。面目ありません」
「何?鬼じゃと!」
お爺さん達は吃驚です。
詳しい話を聞くため信広さんを自宅に招きました。お婆さんは血で滲んだ包帯を取り替えてあげました。
信広さんは説明します。
最近、鬼の集団が現れました。いろんな村を襲っては作物を取られ、村人にも死傷者が出ています。
国は兵を集め討伐をしていますが、鬼は人間より一回り大きく、皮膚が硬くて刀や矢が効きにくいです。
さらに鬼は角の数で大きさ強さが変わります。角なしが身長およそ六尺(百八+一.二センチ)。一本角が六尺五寸(百九十七センチ)。二本角が身長七尺(二百十二.七センチ)。
そして三本角が一匹確認されていており、大きさは七尺五寸(二百二十七.二センチ)。更にその三本角は口から火を吹くそうです。
その為に犠牲者が多くて厳しい状況です。
国の大名である
「そうか。御屋形様に頼られるとは嬉しいよ。しかし行きたいのは山々だが、流石に私も年だ行けないよ」
「やはりそうですか……御屋形様もそれは懸念されていました」
「じゃが、代わりにそこにいる桃太郎を行かせよう。まだ十三歳じゃが奴ならやってくるよ」
「そうなんですか?」
信広さんは不思議そうに桃太郎を見ます。
「お爺さん、いいのですか?その鬼たちと戦ってみたいです」
「あぁ、行くがいい。今までの鍛錬の成果を鬼どもにぶつけてみなさい」
「はい!」
すると、小梅が急に家に入ってきた。
「失礼します。話を外で聞かせていただきました。お爺さん、桃太郎、私も行かせてください」
「お前、立ち聞きしてたのか!」
「小梅、だめだろ。それにおじさんとおばさんが行かせないだろ?」
「私も強いから大丈夫。お父さんお母さんはちゃんと説得するから」
お爺さんはしばらく考えましたが、小梅の同行を認めることにしたのでした。
「いいだろ。桃太郎と一緒に行きなさい。鬼どもを野放しにしたらこの村にも来るかもしれないからね」
「お爺さん、ありがとう」
「小梅、では一緒に行こう。足手纏いになるなよ」
「それはこっちの台詞よ、桃太郎。ちゃんと役目果たすよ」
信広は小梅も行くのに驚きます。
「師匠、ちょっとお待ちください。桃太郎が師匠の代わりに行くのは年齢的に若いですがまぁいいでしょう。しかし小梅ちゃん女の子でしょ?それに若そうだし」
「あぁ、信広さんが言う通り二人とも十三と若いよ。でもさっきも言ったようにこの二人は強いよ。私が鍛えてあげたからね」
「しかし……」
「では今から二人に模擬戦をさせよう。その様子を見なさい。それから判断するのもいいだろ?」
「そこまで言われるのならば」
信広さんは頷き、桃太郎と小梅はお互いを見て頷くのでした。
そしてみんなで中庭に出でました。
桃太郎と小梅は木刀を持って離れて構えをとり、対峙します。
「はじめ!!」お爺さんが合図を出しました。
合図の直後、小梅が桃太郎に一気に突っ込んで上段から斬りかかります。
しかし桃太郎はそれを受け弾き、その勢いで首を斬りかかるが小梅は後退し躱(かわ)されます。
二人は激しく打ち合います。続けるもお互いに決まり手には至りません。
「速い。十三歳の動きじゃないな。怪我をしていない私でも交えたらどうなるだろ」
「あぁ。桃太郎は異常に強いぞ。それにいつも鍛錬に小梅も付き合っている所為か小梅も結構強いぞ」
「そうですね。解ります」
しばらくて、お爺さんの「やめ!」の合図で模擬戦は終わりました。
二人の息が上がっています。
「桃太郎、あんた手加減したでしょう?」
「そうだね。一方的の僕が勝ち過ぎると信広さんに小梅の実力を理解してもらえないだろ?」
「あぁーもう。悔しいなぁ」
そんな会話をしながらお爺さんと信広さんの傍に向かいます。
「二人とも凄いなぁ。二人の実力を認めます。どうか鬼どもの討伐を頼みます。それでまず、この村からだとずっと南に行った海岸沿いになる
「はい。解りました」
「鬼どもが占拠している島は
「鬼ヶ島……」
その日の夜、信広さんは疲れもあって早めに部屋で休みました。
お爺さん、お婆さん、桃太郎の三人が話をします。
そばには飼い猫のミケがいます。
「桃太郎と小梅が出て行くと寂しくなるね。それにミケの言っていることが解らなくなるよ」
三年前から桃太郎の家では三毛猫のミケを飼っています。
実は、桃太郎は動物たちと話ができるのでした。
他にも怪我や病気を治したりなど、 人間には出来ない不思議な術【
「言っていることは解らないかもしれないけど、3年も一緒に暮らしているから気持ちは解るんじゃないの?」
「まぁそうだけどね」
ミケがお婆さんは膝の上に乗って話し始めました。
しかしお爺さんお婆さんには解りません。
『ねぇ、桃太郎どこかいくの?』
「ミケ、そうなんだ。何日かかるか判らないけどしばらく家を出ているから」
『そうなんだ。桃太郎必ず帰ってきてね』
「あぁ、帰ってくるよ」
桃太郎はお婆さんの膝の上にいるミケを撫でるのでした。
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