第2話 結婚相手

マリー達が気を使って席を外してくれたので、お父様と二人きりで話をする。ビオレッタもいるし、早急に結婚した方が良いわ。お父様も、そうお考えのようだ。


「分かった。結婚相手は今探している。国内の貴族になるが、構わんな?」


「ええ。ビオレッタを守れて、誠実でビオレッタとわたくしを愛してくれる方ならどなたでもかまいませんわ。養子縁組をしたのだから、あちらが手を出してくる事はありませんわよね?」


ビオレッタは、あの国の正統な王位継承者。表向きはわたくしとあの国王の子なのだから、新しい王妃が産む子よりも高貴だと判断される。ビオレッタが王位を継ぐ、そんな未来もありえるわ。


……本当は、あんな国に関わらせず父親不在のままビオレッタを育てたい。けど、我々は王族。嫌でも情報が耳に入ってしまう。


それなら、父親はビオレッタを守れる人が良い。わたくしもできる限り手を尽くすわ。ビオレッタに最適な未来をたくさん用意するの。あの子が大きくなった時に自分で幸せを掴み取れるようにしたい。


「ああ。手は出させんよ。うちに援助を頼もうとしたらしいが、宰相が必死で止めているようだ。既にあの国の評判は最悪だ。妃がキャスリーンに手を出そうとした事も広がっている。宰相がキャスリーンを庇わなかったら、即刻潰してやろうと思っていたが……時間をかける方が面白い事になりそうだ。それにしても、本当にキャスリーンはビオレッタが大切なのだな」


お父様が笑う。


「もちろんよ! わたくしは、母親なのだから」


「そうだな。ビオレッタとキャスリーンを大事にする男でないと、結婚は認めん。あの男は王族だったし、前王は賢王だったからな。他国に密偵を送って関係が悪化しても困ると思い調査しなかった。しかし国内なら話は別だ。徹底的に身辺調査をするから安心しろ。年齢や容姿、能力などの希望はあるか?」


「特にありませんわ。歳上でも歳下でも構いません。わたくしは二回目の結婚になりますけど、初夜もしておりません。その事は、お相手に伝えるのですか?」


「伝えた方が良いだろうな。口が固く、真面目な男を探す」


「よろしくお願いします」


「騎士でも構わんか?」


お父様の言葉に、一人の男性を思い出した。お父様は、わたくしの変化に気がついたようだ。


「好きな男がいれば言いなさい」


「……い、いませんわ!」


「キャスリーンは、既に婚姻をして王族の義務を果たした。ビオレッタの幸せを考えるなら、キャスリーンは好きな人と結婚する方が良いだろう」


お父様は、優しく微笑んでわたくしの頭を撫でてくれた。だけど……わたくしの気持ちを伝えてもお父様を困らせるだけ。


あの人は、今どこにいるかすら分からない。それに彼は、貴族ではない。わたくしは王女。結婚相手は誰でもいいわけではない。ビオレッタの為にも、わたくしは早く結婚した方が良い。


「……いません。好きな人なんて、いませんわ。結婚相手を探すのはお父様にお任せします」

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