第24話 壊れ始めた凜に気付かない灯
親友のこんな真剣な表情は初めて見たかもしれない。
今までも、頼み事をする事はあったが、ここまで真剣な表情で、私に頼みごとをする事はなかったと思う。
「彩香にお願いがあるの」
直観的に、灯さんの事だと思った。最近のりんりんは灯さんの事で、悩んでは泣いているので、また灯さんに会いに、泊まりに来て欲しいと言うお願いだと思って、私は、いつもの調子でいいよと言い掛けて止めた。彼女の表情が、それを許してくれなかった。
いつもと明らかに違う雰囲気に、私は軽く身震いしながら話の続きを待った。
「簡潔に聞くね。彩香はお姉ちゃんを愛してる? 」
直球な質問に彩香は、顔を真っ赤にして答えられずにいる。
「お願い答えて、大切な事なの」
いつもの凜らしからぬ必死さに、彩香は真剣に答えないと失礼だと深呼吸すると、ゆっくりと口を開いた。
「好きだよ。愛してる。灯さんと恋人になりたい」
彩香の答えを聞いて、凜はほっとした様に胸を撫で下ろすと、やっぱり彩香しかいないと、彩香にお姉ちゃんをお願いしますと頭を下げる。
凜の言葉の意味と、どうして頭を下げているのかがわからなくて、彩香はどういう意味? と凜に言葉の真意を尋ねた。
「最近お姉ちゃんと、良く話すの。お姉ちゃんが引き籠もりになる前の話となってからの話を」
灯と沢山話して、凜は自分では姉を変えられないと、自分がこのまま灯の隣に居たのでは、灯は変われない。灯はずっと引き籠もりのままだと言う事に気付いた。
凜は、自分では厳しくしていたつもりだったが、灯と話していて気付いた。厳しくなんてしていなかったのだと、結局は大好きなお姉ちゃんを甘やかして、家から出られないままでもいいんだよと、そうしてしまっていた事に、それでもいいんだと、お姉ちゃんは、私のそばに居て、私の言う事だけを聞いていれば幸せなんだと、ずっとずっと自分がお世話をすればいいのだと、そう思っていた時期もあった。
でも、それでは灯の為にはならないんだと、やっと気付けたから、だから灯を本気で愛している彩香に、灯の事を任せたいと思った。
「りんりんは、本当にそれでいいの? 灯さんと距離をあける事が本当に正解だって思ってるの? 私はそうは思わないよ」
「もうこれしか方法がないんだよ。この方法しか……思いつかないんだよ」
泣きそうな顔で、こうしないとお姉ちゃんは変われないんだよと、その声は震えていた。もうどうしたらいいのか、正直わからなくて、もう考えるのが辛くて、響さんは本気の思いなら伝わると言ってくれたけど、その言葉を信じていたけど、ますます自分に依存して、自分をお人形の様に扱いたがる灯に、一時は立ち直って元気になった凜の心は、再び生気を失い掛けていた。
まだ十五歳の少女には、あまりにも残酷な現実だった。
泣きながら、これしかないんだよと何度も呟く凜に彩香は、りんりんはこのままでいてと、灯さんは私が変えるよと言うと、凜にもう泣かないでと凜の頭を撫でる。
「彩香、お姉ちゃんをお願い」
「任されました」
凜は自分が自分でいられる内に親友の彩香に、灯の事をお願いしようと考えていた。
もう自分は自分ではいられない。そんな不安が、心を支配し始めていたから、だから自分が正気を保っていられる今しかないと、彩香にお姉ちゃんをお願いしますと、泣きながら、もう一度頭を下げると、その後は涙で言葉にならなかった。
大好きな親友の為ですからと、彩香はいつも以上に元気に言うと、先ずは灯と恋人にならないといけないよねと、今週末泊まりに行きますかと、それまでに自分なりに考えようと考えていた。
もう疲れた。
何も考えたくないと、凜は灯に頭を撫でられながら、もうこのままお姉ちゃんの好きにさせればいいやと、自棄になっていた。
「今日も凜ちゃんは可愛いね。ねえおっぱい触っていい? 」
「いいよ。満足するまで触って」
以前なら、ふざけるな! と灯を一喝していたが、今の凜にそんな気力はもう残っていなかった。
響さんに会いたいと言う気持ちが、響を愛していると言う気持ちで、ギリギリ自分を保っている状態だった。
凜のおっぱいを触れる事に舞い上がって、灯は凜の瞳から光が失われかけている事には気付いていなかった。
「お母さん。今週末なんだけど、絶対にりんりんとお泊りしてあげてね」
「分かってるわよ」
仕事が忙しくて、暫らく会えていなかったが、会ってない内に、大分大変な事になっていたらしい。凜ちゃんが、このままでは、凜ちゃんじゃなくなってしまうと、娘から言われて、こんな事なら無理してでも会っておけば良かったと響は後悔するが、後悔しても仕方ないので、状況は会って確かめる事にしよう。
「メールでは、あまり変化は感じられなかったけど、そんなにヤバイの? 」
「うん。最近全然笑わないし、返事も曖昧になってきてる」
彩香の話を聞いて、そこまで酷い状態になっているなんてと、響は彩香に教えてくれてありがとうと言うと、凜にメールする。
あともう少し、あと数日我慢すれば響さんに会える。
学校から帰宅すると、最近は自分の部屋ではなくて灯の部屋に直行する。灯の部屋で着替えて、灯の部屋で勉強をして、灯の部屋で灯と一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒のお布団で眠る。
その合間に灯に触られたり、灯のゲームに付き合ったりする。以前なら絶対にエロゲーなんてしなかった。
エッチな事に興味は持ってはいても、ゲームや動画と言った媒体に興味はなくて、お姉ちゃんは、本当に好きだよね。私はやらないけどねと言った感じだったのに、壊れ始めた心では、自分が何をしていて、何をされているのかも、ハッキリとは理解出来ていなかった。
学校にいる間は、まだ自分でいられる。
彩香やクラスメートが居てくれるから、特に彩香が一生懸命に話し掛けてくれるから、どんな話をしてくれているのかは、あんまり覚えていないけど、もしかしたら曖昧な返事をしてしまっているかもしれないけれど、彩香の優しさが、彩香の声が私を私と言う存在を認めてくれてる気がして、私は私でいられる。
顔も声も体型も響さんより、ずっと幼いのに、彩香を見ていると、彩香の声を聞いていると、響さんを感じられてつい彩香に甘えてしまう。
その度に最近のりんりんは甘えん坊さんだねと、笑顔で言われてしまうが、私はただうんとだけ言って、甘えてしまう。そんな私を彩香は、そんなりんりんも可愛いからいいけどねと言って、受け入れてくれるのが嬉しかった。
だから、学校が終わると私の心は一気に闇へと沈んでいく。
またあの時間が始まってしまうのかと思うと、私の心は深い深い暗闇へと落ちていってしまう。
彩香が気を使って、カラオケでも行く? と誘ってくれたりするが、私はお姉ちゃんが待ってるからと、彩香の誘いを断る。
少しでも帰りが遅いと、灯が怒るのだ。以前なら拗ねるだけだったのだが、最近は帰りが遅いと怒る様になった。
学校の用事で遅くなる時は、必ずメールで連絡を入れる。学校の用事に関しては許してくれるが、その他に関しては許してはくれない。
だから、こうして彩香と遊びたい気持ちにも、女子高生らしい事をしたい気持ちにも蓋をして、家に帰宅している。
疲れた顔を、暗い顔をした凜の後ろ姿を見つめながら、彩香はりんりん、もう無理しないでと悲しい顔で凜を見ている事しか出来ない自分が辛かった。
あれから自分なりに必死に考えたが、どうしたらいいのかは思いつかなかった。どう灯と接すればいいのか、彩香にはわからなくて、そのままの自分で先ずは接するしかないと、自分の方に灯の気持ちを向けないと、大切な親友が壊れてしまう。
灯と恋人になりたい気持ちも、勿論あるが、それ以上に大好きな親友が心配で仕方なかった。
帰りたくないと言う気持ちを抑えて、帰宅するとそのまま灯の部屋をノックする。
「ただいまお姉ちゃん」
部屋の扉が開いて、嬉しそうな顔をした灯がおかえりなさいと凜の手を引いて、凜を部屋に迎え入れる。
満面の笑みで凜に抱きつく灯。
最近までは、この笑顔も抱きつかれる事も嫌じゃなかった筈なのに、今は心が痛い。凜には、その理由がわかっていた。
響さんが好きなのに、いまだに灯のお人形さんを続けている。もうこんな事は止めようと、やっぱり姉妹でこんな事はおかしいよと言いたいのに、言えずにいる。そんな自分が嫌になってしまう。
その事で、更に自分の心を壊して擦り減らして、自分を失っていく。
「凜ちゃん、今日はしたい事があるの」
「何をしたいの? 」
聞いてはいけないと、今日のお願いは絶対に聞いてはいけないと、凜の本能が警鐘を鳴らす。
いやらしい笑みを浮かべながら、灯は凜を部屋に招き入れてから、部屋の鍵を閉めると、そのまま凜を押し倒して、凜に馬乗りになる。
「お、おね、な、何をするの? 」
いきなり押し倒された事と、灯のいやらしい笑みに凜は恐怖を覚えて、抵抗したいのに、何故か身体に力が入らない。
恐怖で、声も上手く出せない。
「お姉ちゃん、凜ちゃんとしたいの」
ずっとずっと我慢していたのだと、妹だから、キスもエッチもしたいのに、その気持ちを必死に抑え込んでいた。
でも、もう我慢の限界だと、灯は凜に馬乗りになりながら器用に自分の洋服を下着を脱ぐと、一糸纏わぬ姿で凜を見つめながら、凜ちゃんが悪いんだよと凜を見下ろして言う。
「ど、どうして私が悪いの? こんな悪い冗談やめようよ」
凜は、まだこれは悪い冗談で、灯の悪ふざけだと思っている。
「凜ちゃんが、お姉ちゃんのお願い何でも聞いてくれるから」
凜ちゃんが自分のお願いを何でも聞いてくれるから、もう我慢出来なくなったんだよと言うと、凜の制服に手を掛けて、凜の制服を脱がせ始める。
「わ、悪ふざけが過ぎてると思うよ。お姉ちゃん、お風呂ならまだ早いし」
凜は未だに灯の悪ふざけだと信じていると言うか信じたい。姉が妹に欲情するなんて、そんな事は漫画の世界であり、現実にはあり得ない事だと、だからこれは、お姉ちゃんの戯れなんだと、しかしそんな希望は簡単に打ち砕かれた。
「本気だよ。凜ちゃんにお姉ちゃんの初めてあげるから、私にも頂戴」
まだ処女だよね? 響さんとは、まだキスまでって言ってたもんねと笑顔で言うと、凜の下着も脱がせてしまった。
この時になって、凜は灯が本気なんだと気付いて、必死に抵抗を始める。
「やめて、お姉ちゃん間違ってるよ! こんなにおかしい! 」
「間違ってなんかいないし、お姉ちゃんはずっとこうしたかったし」
少女から、少しずつ大人へと成長して行く凜を見ている内に灯は、凜に欲情する様になって行った。
ゲームのキャラクターを漫画のキャラクターを凜に見立てては、何度も何度も自分を慰めては、凜ちゃんとしたいと思っていた。だから、灯にとっては何も間違ってはいなかった。
「お姉ちゃんには、彩香がいるんだよ! 」
「まだ付き合ってないし、私彩香ちゃん好きだけど、恋してるかわからないし、それに、凜ちゃんがいればいいから」
灯の言葉を聞いた凜は絶望した。
灯がこうなってしまったのは、自分が原因だと悟ったから、自分がして来た事は灯を駄目にする事だったんだと、そう気付いてしまったから、凜は抵抗を止めてしまった。
凜がしてきた事は決して間違ってなどいない。本気で灯を姉を大事に思っているから、大好きなお姉ちゃんが心配だったから、ずっと寄り添ってきた。
お姉ちゃんの為になると、きっとお姉ちゃんは立ち直ってくれると信じて、しかしその思いの歯車は、どこかで狂い始めて、狂い始めた事に凜は気付かずに誤った道を突き進んでしまっていた。
「お姉ちゃんごめんね……私のせい……だよね」
手で顔を覆って泣き出してしまった凜を見て、灯は凜の下腹部へと伸ばしていた手を止める。
どうしたの? このまましちゃいなよ。
何言ってるの! 凜ちゃんは妹なんだから、絶対に駄目よ!
別にいいじゃん。姉妹でエッチしたって、そういう姉妹もいるって。
そんな事、絶対に駄目よ! 灯わかってるでしょ!
まただ、また私の中で天使と悪魔が戦っている。
私は、どうすればいいの?
凜ちゃんとエッチしたい気持ちはある。でも、凜ちゃんは大切な妹で、可愛い妹で、愛する妹。
そんな世界一大切な妹の心と身体を傷つけてもいいの?
自分の欲望の為だけに、自分の性欲の為だけに本当に、妹を犯してもいいの?
全裸で泣いている凜を見下ろしながら、凜の下腹部に触れたまま灯は指一本動かせずに、泣いている凜をただ見下ろす事しか出来ない。
そのまま凜も灯も動けずにいた。
時計の針だけが、動けない二人を無視して時を刻んでいた。
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