最終的には小指くらい

「ニケちゃんニケちゃん、これ見てよこれ」

「んー、なんですかー」

 買い出しから帰ってきた私の高揚気味な声に、読書中だったニケちゃんが生返事を返してくる。悪くなさそうな御機嫌具合にほっとする。

 買い物袋から目的のものを漁り出すと、それを机の上に置いた。

「この辺りの工芸品らしいよ」

 ニケちゃんが本から目を離して横目でお土産を見る。

 一瞬で視線が冷ややかになった。

「普通の木彫りの人形じゃないですか。またそんなの買って、学習能力が無いのですか。前に買ってきたのはなんでしたっけ。魚咥えて逃走を図る木彫りの熊でしたか。街を出た後、重いとか言い出して街道横の祠にお供えしたの忘れたんですか。あんなの神様大迷惑ですよ」

「大丈夫だよ、これ熊じゃなくてひよこだし、小さいし軽いし可愛いし。それにただの人形じゃないんだよ?」

 人形を手に取って軽く捻りながら上下に力を加えると、人形が二つに割れて中から一回り小さい同型の人形が出てきた。それをさっきと同じように割ると、さらに小さい人形が現れる。

「入子人形って言うんだって」

 瞬く間に大家族となった人形たちに、ニケちゃんは大した感動も無い様子で「そうですか」と読書に戻っていった。

「ぱかって割るとぽんって出てくるんだよ?面白いよ?」

「……モモを割ったら小さくて賢いモモが出てこないですかね」

「……怖いよ」

 なんだか口調が本気っぽかったので、急いでひよこ大家族を元に戻して雑嚢に入れた。

 これを捨てるなんてとんでもない!

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