ねこねここねここねこねこ

「……鬱陶しいです」

 どことなく苦渋に満ちた表情でニケちゃんが呟いた。

「えー、私は羨ましいけどな」

「それはモモがこいつらの同類だからです。……どうして私に寄ってくるんです。あっちいけ」

 しっしっ、と手を振る視線の先には、片手では足りないくらいの猫の集団。歩いているにも関わらず、ニケちゃんの足に体を擦り寄せてぐるぐる言っている個体もいる。

 私にも一匹分けて欲しいところなのだけど、何故か一定の範囲から近付いてこない。ならばとこちらから歩み寄ってみたところ、一斉に毛を逆立てて唸られた。とても傷ついた。

「すっごく警戒されてるんだけど。どうして動物に嫌われるんだろう?」

 野生の類いは仕方ないにしても、町中で飼われているような犬や猫、果てには牛や馬にまで警戒されてしまう。馬車には乗れるけど、正面に回って撫でようとすると後退りされるくらいの警戒態勢。……もふもふしたいだけなんだけどなぁ。

「……こいつらにとって、モモは捕食する側なのです。人間社会の横暴貴族なのです。地を這う平民は食い物にされないように隠れて生きていくしかないのです」

 酷い。

「じゃあ、なんでニケちゃんにはそんなになついてるの?私には食べられちゃうんだよね?」

 食べる気はまったくないけど。もふもふするだけだし。

「私はモモと違って平和主義なのです。鬱陶しいとは思っていても蹴飛ばしたりしないのです」

「私だってそんなことしないよ」

「嘘つきです。モモは一昨日、茂みから飛び出してきたか弱い兎を蹴り飛ばしていました」

「ニケちゃんより大きくて筋肉ムキムキな生き物をか弱いとは言わないと思うな……」

 大口開けてよだれ撒き散らしてたし、完全に補食しにきてたよ、あれ。

「蹴り飛ばしたのは事実です。それに、モモに比べれば大抵の生物はか弱いのです。我々はか弱いもの同士、身を寄せあって生きていくのです」

 さっきまで鬱陶しいと言っていた猫達から一匹を抱き上げて、これ見よがしに撫で付ける。

「くっ」

 心地よさげに目を細める猫とニヤニヤするニケちゃんに、私は恨めしげな視線を向けることしかできなかった。

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