娘より
どうも、おひさしぶりです。娘です。ニケです。
モモから『手紙を燃やすと違う世界に届くらしい』と教わったので倣うことにしてみました。違う世界――死後の世界とやらがあるのか、私にはわかりませんけど、今の世の中、紙はそれほど貴重でもないので試すだけ試そうと思います。届いたなら幸いです。
あ、モモというのは旅の共です。色々な諸事情は省きますが、私は森から出て色々なところを歩き回っています。保護者面が鬱陶しいですが、悪いやつではありません。あんしんしてください。
……こういうこと――手紙というものを書くのは初めてで何を書けばいいのかわからないので、最近あったことを書こうと思います。
昨日、モモが立ち寄った町で行われていた腕相撲大会とやらに参加して圧勝していました。あまりの瞬殺っぷりに、見物客どころか他の参加者も引いていました。そんな空気の中で大はしゃぎしていたモモは女子として終わってます。お嫁にいけないと思います。
モモはよく自分のことを「花も恥じらう年頃の乙女」とか「珠のお肌」とか言ってます。最近気がついたんですが、あれは冗談ではなく本気で言っていたようです。小物とはいえ竜種を涙目にする女を乙女とは言わないと思うのです。『乙女』と書いて『おつ、おんな』です。ちなみにこれは漢字と言うらしいです。モモに教わりました。乙は終わってると言う意味もあるそうです。
あ、でも、料理とか裁縫とか、そういう一般的に家庭的といわれる分野では女性っぽいです。上手です。女子力高いです。女子力というのは良い家庭を築くのに必要な技能指数のことだそうです。モモが買ってきた新聞に書いてありました。
でも、やっぱりモモはお嫁にはいけないと思います。あたまわるいですし。
可哀想なので、側にいてやります。拾った責任というやつです。
こんなのでいいのかわかりませんが、そろそろ紙面が埋まりそうなので終わりにします。
そちらはどうか知りませんけど、ニケは元気にやっています。森には帰れませんけど、それなりに楽しく生きています。ありがとうございます。
また、気が向いたら手紙を書いて燃やします。
あなたたちの娘、ニケでした。
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