第四幕 「決意の私」
翌日は天文部の週一回の定例会だった。私は部室の前で立ち尽くしていた。震える鼓動を感じながら引戸に手を掛けると、扉の向こうに彼の気配を感じた。私の脳裏に彼の繊細な瞳が浮かぶ。わたしはそんな彼を傷つけてしまったんだ。次第に手の力が抜けていく。そして、私は逃げるように部室を後にした。
家に帰りわたしは自分の部屋で自己嫌悪に陥っていた。最低すぎる。自分で観望会を企画しておいて休むなんて…。後輩にも申し訳がたたない。
そんなことを考えていると後輩から連絡が来た。
「椿先輩、体調大丈夫ですか?観望会の準備は晴人先輩と進めています。開催の目処はつきそうです。心配しないで身体を休めてくださいね。」
その連絡にわたしは驚いた。彼は、私が体調不良で休んだことにしてくれて、さらには観望会の準備までしてくれたのだ。
晴人はわたしを守ってくれるナイト様なんだとまるで少女小説の主人公のような気持ちになった。なんとなく世界が明るくなったような気がする。恥ずかしくなって、黄色いクマのぬいぐるみまで殴ってしまう。
しかし、こんな気持ちも、すぐに自己否定の渦に飲み込まれてしまう。優しい彼と比較して、自分をもっと嫌いになってしまう。
彼に会って何を話せばいいんだろう?考えても考えても、答えはでない。クマさんに聞いてみても「殴ったのにずいぶん虫がいいんだよぉ。」としか言ってくれない。わたしは頭を抱えた。
そして、翌日もその翌日も部室に行くことができずに休日を迎えてしまった。土日も悶々としてプレゼント探しに行く気力もなかった。
日曜日の夜、悩みに悩んだ末、わたしは吹っ切れたようにこう思った。
わたしが好きなんだからそれでいいじゃないか!彼に正直に謝ろう。
わたしはそう決意したのだった。
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