No.6 初めての戦闘

 今現在、僕は魔物と目が合っている状態だ。魔物は僕を警戒しており、微動だにしていない。僕も同様に動きを止めて魔物を観察していた。

 この時の僕は、ダンジョンに潜る前に掲示板の『魔物との戦闘:基本編』で調べたあることを思い出していた。初魔物、初戦闘なのに僕の頭の中は冷静に回転しているなと考えながらも、あることを実行する。


「えっとー。まずは魔物に向かって指をさすんだっけな。それで【ロックオン】って言えばいいんだよな。間違ってないよな?

 こうすれば、魔物ステータスが分かるようになるんだよね。」


 掲示板に書かれた通りに、魔物に向かって【ロックオン】をする。

 そうすると、魔物の右上の空中部分に、僕のステータス画面と似たようなものが出現する。魔物のステータスである。


 ♡♡♡♡♡


 名前:ベビーラビット

 Lv:1

 HP:1/1

 MP:1/1


 STR:1

 DEF:0

 INT:0

 RES:0

 AGI:1

 DEX:0

 LUK:0

〈スキル〉〈魔法〉


 ♡♡♡♡♡



 掲示板情報では、


 HPは体力のことを指しており、HPが残っている限り体に傷はつかないらしい。HPが0になって初めて本体(自分の体)が怪我をする。魔物に関してはHPが0になった時点で消滅し、ドロップを落とすらしい。寝れば回復する。


 MPはスキルや魔法を使うときに消費する。10分ごとに1回復するため、配分を考えなければ使いたいときに使えなくなってしまうものである。


 STRは物理攻撃力である。基本的なダメージ計算は、

「〈スキル〉の攻撃力+STR−相手のDEF=相手に与えるダメージ」と考えていいらしい。

 

 DEFは物理防御力である。相手のSTRより高ければ、受けるダメージが0になるようだ。ただし、「〈スキル〉の攻撃力+STR=DEF」の場合、お互いに1ダメージを受けてしまう特徴を持っている。


 INTは魔法攻撃力である。ダメージ計算はSTRの時とほぼ同じで、参照するステータスが変わるだけ。

「〈魔法〉の攻撃力+INT−相手のRES=相手に与えるダメージ」こんな感じだ。

 しかし、〈魔法〉には、少し面倒なことがある。攻撃力を持つ〈魔法〉は必ず属性が付随している。基本的に魔物の弱点属性の〈魔法〉を使わなければ攻撃力として計算されない特徴を持っている。

 これについては、後々詳しく説明した方がいいかもね。今の僕には〈魔法〉なんてものはないからなぁ....


 RESは魔法防御力である。DEFときと同様。

 「〈魔法〉の攻撃力+INT=RES」の場合は0ダメージとなるだけである。違いを挙げるとすると「STRとDEF(物理関係)」のお互いに1ダメージを受けてしまうようなことは起こらないらしい。


 AGIは速度、機動力である。高ければ速く動くことができる。また動体視力も上がるらしい。見た目は変わらないのに身体のスペックが高くなるような謎現象が起こるようだ。万年眼鏡の人がスペック上がって眼鏡が要らなくなった記事を見たことがあるよ。


 DEXは状態異常耐性らしい。ゲームで定番の手先が器用になるとか、武器の扱いがうまくなるのではないようだ。通常職が11種類しか無いこの世界にはあまり必要とされないステータスだからね。武器の扱いなんて経験が物を言う、練習あるのみ。

 掲示板では様々な考察がされている。現状は「器用に状態異常を避ける」的なことがしっくりくる一般論となっている。


 LUKはよう分からん。高ければ、いい宝箱が出やすくなるんじゃないかといわれているぐらいだ。初期LUK値が0か1の人が多いからね、30年経った今でも研究が進んでない様子だ。


 ステータス説明はこの辺にしておこうか。


 僕は、ベビーラビットのステータス再度見直す。

「弱いな」と呟き、ベビーラビットとの距離を詰めることにした。


 見た目は子供サイズのウサギと変わらない。魔物でなければペットとして買いたいと思う程に可愛らしい容姿だった。


 先制攻撃はベビーラビットだ。真っ直ぐ僕に突進してくるベビーラビットをさらり横に避ける。僕に避けられたことに気づいたベビーラビットは突進を止めて、僕の方を振り向く。

 少し僕との距離が開いたので、試しにスキルを使ってみようかと考える。でも、リスクがあるんだよね。今回は止めとこうか。通常攻撃で倒せる魔物だしね。


  ベビーラビットと戯れて1つ気になった。魔物の右上に表示され続けるステータスが邪魔だなって。ずっと魔物に追随しいるし、常に視界に入るから集中できないんだよ。

 まぁ、これに対しては対策がある。【ロック】と呟くだけだ。これで【ロックオン】により表示された魔物のステータスを消すことができる。


 初戦闘は緊張の欠片も無く、魔物が弱いゆえに検証にはしってしまっていた。手探り状態で探って行くのが楽しんだよな。知識があっても実際に経験してみるとね....

 

 今試したいことは終わったので、ベビーラビットの近くに駆け寄り、右手に持つ短剣でベビーラビットを斬る。

 あっけなくベビーラビットのHPはゼロになり、レベルアップ音と共に極小の魔石を残して消滅していく。

 極小の魔石は一律100円。世知辛いなと思いつつ持ってきたバックに魔石をしまう。


 こうして、僕の魔物との初戦闘は終わった。

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