第10話 許し
―1年後―
「今日は、2人ともシフトないし、大学も休講だから、どっか行こうか」
朝、10時、少し遅めの朝ごはんを食べている時に、駿が言った。
「え、いいの?遊園地行きたい!!行った事ないの!!ジェットコースターとか、お化け屋敷とか、メリーゴーランドとか、乗りたいもの、いっぱいあるの!!」
余りの天稀の興奮ぶりに、駿は、言えなかった。
「わー!すごーい!!あのジェットコースター乗ろう!!」
「う…う…うん…」
「?駿?」
「い、いこ、か…」
「ふ、ふふ、ふふふ…。もしかして、駿、怖いの?」
「わ、悪いか!?」
「ううん!ぜーんぜん!!思いっきり楽しめる!!」
「なんじゃそりゃ!!」
そう言うと、天稀は、駿の手を取って、絶叫マシンを乗りまくった。駿は半べそで、 『腸が飛び出す』とか、『パンツ売ってるかな?』とか、『もうメリーゴーランドで良いじゃん』とか、泣き言ばかり言い出すから、天稀は、面白くて仕方なかった。でも、こんな幸せが、続くのか…天稀の心は、いつも何処か、不安で溢れていた。
「あー!!楽しかったぁ!!」
「……よーござんした…」
「もう…良い加減機嫌直してよ!駿!」
「お化け屋敷だけは…お化け屋敷だけは…嫌だって言ったのに…言ったのに…」
「はいはい。ごめんなさい。はい、あーん」
「ちょっ!なに!?」
「カレー、お詫びに食べさせてあげる」
「いらないよ!それこそ拷問!!」
「何よそれ!もう!どっちが失礼かわかんないよ!!謝らなきゃよかった!!」
そう言うと、天稀は、自分の口にカレーを運んだ。もぐもぐ怒りながらカレーを頬張る天稀を見ながら、やっぱり、そんな天稀が愛おしい駿だった。
その日の夜、駿は、ある事を決意した。
夜11時。天稀は、ベッドにもぐりこんだ。その5分後、駿は、勇気を振り絞って、天稀の部屋のドアをノックした。
コンコン…。
「天稀?もう寝た?」
「駿?寝てないよ?どうしたの?」
「入っても…良いかな?」
その時、天稀の脳裏にも、ある事が過った。
「い、いいけど…」
ガチャリ…。
そぉっと駿は、扉を開けた。そして、こう言った。
「一緒に、寝てもいい?」
「…うん」
もぞっ、と、駿が、天稀の布団に身を入れる。すでに、天稀の体温であったまった布団は、気持ちよくて、天稀の匂いも、心地よくて、駿は、そっと上半身を斜めに起こして、天稀の顔を覗き込むように、髪を撫でた。天稀は、その仕草に、とても恥ずかしそうに、目を潤ませた。
駿は、天稀の額にキスをした。
そっと、駿は、天稀のパジャマを脱がそうとする。すると、天稀が少し、躊躇ったのが分かった。多分、火傷の跡を気にしているのだろう。
「大丈夫だよ。俺は、この傷跡も、愛してる…」
駿は、そう言うと、天稀の上半身のパジャマを脱がせた。その瞬間、駿は、驚かずにいられなかった。両肩、右胸にかかって背中だけではなく、天稀の火傷の跡は広がっていた―――…。
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