第24話 午後からの周回で

 全部で十二匹のカエルを狩った俺は、正午の時間にセーフティーエリアにテントを設置した後に昼食を摂った。


 今日は兎肉を大量に使ったホワイトシチューだ。


 手順はじっくりと肉と野菜に火を通して水を入れて煮立て灰汁を取ってからシチューの元を一箱入れる。


 アイテムボックスの容量と保存機能が強化されたから出来るキャンプメニューだ。


 今回予定している一週間の探索期間全てをこういった食事にするなら、ミニバンクラスのスペースを持った車が必要となる。


 ダンボールで7つくらい用意するだろうからな。


 一時間程度で作り終えてから大量のパンをアイテムボックスから取り出す。


 勿論、何の味付けもしていないプレーンのモノだ。


 何故、米党の俺がこんなにパンを持って来ているのかと言われると、悠二に持たされたからだ。


 戦闘でのダメージが大きくて作るのが大変な場合もあるかもしれないだろ?と言われて何も言い返せずに持たされた。


 今出したこの大量のパンもそれのほんの一部だ。


 俺は30分程もくもくと食べ続け、七人分くらい一気に食べた。


 食べ終わった時間は大体午後一時半ぐらいなので、二時から再びボス部屋周回を再開する事にした。


 「ステータス・・・」


 俺は30分程の食休めの時間にステータスからSPの割り振りをする事にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帝 拳信


 レベル 32


 筋力 282


 反応 303


 敏捷 279


 器用さ 277


 魔力 102


 SP 0


 スキル

 闘気(MASTER)

 気功

 波動撃

 破邪

 加速

 先駆者

 鑑定(MASTER)

 エネミーサーチ

 トラップサーチ

 アイテムボックス(MASTER)


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 SPは全部で12Pあったので鑑定とアイテムボックスがカンストするまで注ぎ込んだ。


 それでも3P程余ったので残りを気功に振り分けて気功をカンストの手前までスキルレベルを上げた。


 「・・・やっている事は本当にゲームみたいなんだよな〜・・・」


 若干SAN値がブレイクしながらも、俺は努めて冷静に自分のステータスを把握した。


 因みに現在の身体能力は、完全にどこぞの七つの玉と手からビームを出す大物格闘バトルファンタジー並の身体能力を持っており、スチール缶を、音速に近いスピードで動けるのがかなり不味いと思う。


 近代兵器は只の豆鉄砲にしかならなくなる可能性が出てきた。


 今は俺を含めても極少数だろうがいずれ未成年者にもステータスを上げている者が現れるだろう。


 「・・・場合によってはドラゴンと喧嘩するつもりなんだから今更か・・・」


 もし母の薬の材料にドラゴン系のモノがあったら間違いなく俺は奴らを狩りに行くだろう。


 「・・・ドラゴンって食えるのか?」


 俺は食用のドラゴンが存在する事を祈りながらボス部屋を再び周回を始めた。


 そして、周回を再開して暫しの時間が経ち、午後六時に行った本日ラストアタックでその異変は起きた。


 「・・・・・なんだ?さっきまでとは雰囲気が・・・」


 ピリピリとした空気を感じながらボス部屋の中央に近づくと、


 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!?


 揺れていないのに地鳴りのような響く音を中央から響かせ、ボス部屋の中央に魔法陣のようなモノが現れ、


 「ゲェゴォォォぉぉ!!」


 今まで相手にしたボス蛙よりも二周りは大きいカエルが出現した。


 「・・・!?レアボスって奴か!?」


 俺は異変と共に闘気と気功のスキルを発動し、今まで通りに側面から攻撃を加える。


 身体を左右に振りながら深く潜るように踏み込み、立ち上がる力も加えてボディアッパーを繰り出す。


 ドォォォォォォン!!?


 破壊音をボス部屋の中で響かせるが、迫力に反して相手のカエルは、


 「・・・チッ!?ケロッとしてんじゃねぇよ・・・ダメージは手応え的にあるはずだが・・・」


 俺はカエルの正面に入らないように回り込みながら鑑定を使った。


 「鑑定」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 モンスター名 ジャイアントボスフロッグ


 通常のボスフロッグよりも大型の個体でその見た目通りのタフネスを誇る。

 通常は複数のパーティを組んで戦わないと負けるとは言わないが仕留めきれないタフネスさが厄介なモンスター。

 水属性との魔法を操る事も出来る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 


 カエルの周囲を足を使って撹乱しながら鑑定を見た俺の感想は、


 「・・・レイドボスか!?コイツ!?」


 俺は徹底的にヒットアンドアウェイを繰り返して慎重にカエルの体力を削っていく事にした。


 「レベルが上がったっていうのもあるかもしれないが、気合と根性と体力で打ちのめしてやるから覚悟しな!!」


 俺は右に行こうとして左に、左に行こうとして後ろに、後ろに下がると思わせて前に、と相手のリズムを狂わせるように動き、相手が攻撃を外した時に徹底的に拳を叩き込んだ。


 しかし、予想通りに相手もタフでこちらに攻撃を当てる事は出来ないものの、何度攻撃を当てても堪えているようには見えなかった。


 「クソ!?面倒な・・・」


 気功と闘気は既に何回か発動を繰り返しているが、幸いこれと言って不調を感じる事は無い。


 だが、決定打に欠ける以上どこかで賭けに出ないといけないだろう。


 「・・・カエルの脳ミソは確か頭の眉間よりもちょっと上だったか?」


 俺はありとあらゆる生物の弱点である頭部を狙う事にした。


 「ゲコゲコゲゴォ!!?」


 カエル魔法を唱えた。


 そこまでは良いとして使ってきた魔法は見た事が無いモノで、出現した黒い球体は見るからに


 「!?フン!!」


 ソレを見た瞬間に俺は地面から適当に石を拾って黒い球体に投げつけた。


 すると、石は慣性の法則を無視して直角に地面に落ちた。


 「!?重力魔法か!?」


 俺は即座にカエルから距離を取った後に魔法の効果範囲を確認した。


 「・・・直径で10メーターくらいか?結構隙間があるな・・・?」


 魔法の効果範囲を確認しているとカエルの様子が妙だった。


 「・・・微妙にダルそうにも見えるが・・・魔力切れというやつか?・・・いずれにしても攻めてみるか!!」


 ゲームのボスのように戦闘中に堂々と休憩するカエルに俺は容赦なく飛び掛かり、


 「オラァ!!」


 カエルの脳天に拳骨を叩き込む。


 「グゲェェェェ!?」


 するとカエルから苦悶の声が響いた。


 手応えを得た俺は繰り返し拳骨を叩き込み続けると、


 「ゲェゲェェェェ!!?」


 カエルは伸びてしまったが、まだ生きているようなので更に攻撃を繰り出す。


 「・・・気功と闘気の効果を全部一箇所に集中出来れば終わりそうだな」


 意識して気功と闘気の効果を集中させるとまた別の力が右拳に集中していくのが分かる。


 確かに紅く光る右拳を俺は全身全霊でカエルの頭に叩き込んだ。


 ゴッ!!?ドォォォォォン!!!!?


 鈍い音が奔った後に衝撃波のような爆音が辺りに轟いた。


 パキッ・・・パァーン!!?


 俺の両拳に着けていたガントレットは粉々に砕けてしまった。


 「・・・やれやれ、RPGの戦闘かよ・・・おかげで助かったが・・・まだまだ攻撃力が足りないか・・・」


 あのカエルに俺の攻撃が全く聞いてない訳ではなかっただろうが、それでも百発近く殴ったからな・・・頭が数発だっただけに他の部位だとやはりダメージが通り辛いのだろう。


 俺は回収出来るようになったジャイアントボスフロッグをアイテムボックスに回収して、宝箱の出現を待つと、


 「おっ!?何か今までよりも宝箱がデカい」


 俺は出現した宝箱を慎重に開けると、


 「・・・具足か?確かに丁度壊れたから丁度良いといえば丁度良いのだが・・・鎧もあるな、金属ではなくレザー系か・・・何の皮だ?」


 俺はとりあえずアイテムボックスに収納して他のアイテムをチェックする。


 「・・・ふむ、この常闇草とやらも鑑定した感じ薬の原料になりそうだし・・・一旦戻って薬の原料だけでも渡しておくか」


 今日は既に遅いのでボス部屋を抜けた先にあるセーフティーエリアで休む事にした。


 「しかし、カエルの肉か・・・あのデカいカエルが食用だとは・・・ダンジョン侮り難し・・・」


 俺は初めて食べるカエルの肉に少しビビりながらも晩飯の用意をした。


 

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