第21話 食糧を買い付けた後に
葵の運転で俺の親友とも言える(被害者とも言える)悠二が働いているスーパーを訪れると、
「相変わらずのモテっぷりだな、早いとこ色々と決めないと大変な事になるぜ?」
悠二は俺の腕に引っ付いている二人を見ながらそんな事を言った。
「?俺なんて簡単に言うと親戚のお兄ちゃんみたいなもんだろ?」
俺は何故そんな話になるのか分からず、悠二にそう言うと、別の所から質問がきた。
「今回、拳兄はどれくらいの食材を用意して貰ったんですか?」
他所行きモードの結月に葵が猫のように目を丸くしながら凝視しているのを俺は苦笑しながらとりあえず支払いを済ませる事にした。
「今回は8万以内に収まったよ、7万9千2百円だ、ホレ、領収書」
俺は悠二に8万円渡してお釣りを受け取り、アイテムボックスの中に食糧を回収していく。
「・・・しかし、今はもうそのアイテムボックスとやらの中だとあまり食材が悪くなる事が無いんだろう?最初から作った方が良くないか?」
悠二が俺のスキルの事に関して質問するが、
「そうは言うが悠二、お前こんな透明な板にそう書いてあったとしてそれを鵜呑みに出来るのか?流石にダンジョンのモンスターを食い尽くすのは俺でもちょっとだな」
「・・・それもそうだな、まだ誰もそこまで確証を得られてないんだったな、そっちの二人の病院もそんな感じなのか?」
俺と悠二の会話を眺めていた結月と葵は、サラッと肯定した。
「今はダンジョン病が猛威を奮っていますからね、早い所ワクチンを作らないと全世界の3割を超える被害が出ると、私達は予想しています」
「多分、拳兄は大丈夫だと思うけど・・・世間一般の人達を中心にこれから発症する可能性があるって、私達全員で答えが一致してしまいましたから」
猫被りな結月はともかく、葵は完全に大和撫子な答え方だ。
それでも現場の医師の答えを聞いた悠二はため息を吐いて、
「・・・これでもうお前を手助け出来ないとは言えなくなった訳だ」
そんな気が無いのに憎まれ口を言う悠二に結月が、
「・・・瑠花の前でそんな事を言ったら許しませんよ?」
「大丈夫、瑠花はアレで肉食系」
「ほう?そうなのか?・・・よし、悠二・・・飲みに行くぞ!」
「飲みに行くぞ!じゃねぇわ!?ていうか君達は瑠花に何処まで聞いてるんだ!?」
結構真顔で喋っていた結月に葵が爆弾を投下、ソレを俺がキャッチして更に投げつけるという暴挙に、悠二のツッコミは追いつかなくなった。
「まぁ、瑠花が幸せに暮らしているのは知ってるから今回は見逃してあげますけど、瑠花の前でそんな事言ったら・・・拳兄に瑠花と話をしている事とか話しちゃいますからね?」
「いや待て、流石に親友の夜の話まで俺は聞くつもりは無いぞ?」
「・・・大丈夫、ちゃんとセクハラにならないように考慮する」
「ソコ!?考慮する所ソコなの!?まずウチの夫婦生活をバラすのはヤメてもろて?」
言ったかどうか分からないが悠二はこう見えて既婚者だ。
相手は前に話した中学校からの理那達の親友で今は
そう悠二は10才も年下の嫁を射止めたのだ。
そのせいか結婚式当日の俺以外の友人達の嫉妬は凄まじく、中々思い出に残る結婚式だったのではないかと俺は思っている。
「さて、これ以上悠二を弄ぶと瑠花に怒られそうだから俺達も行くか」
「そうですね、瑠花は今デリケートな時期なんですからちゃんと優しくして下さいね?初めてじゃないけど、妊婦は本当に大変なんですから・・・」
結月の説教に納得しつつ、俺は祝い物を送らなければと、心にメモしておく。
「・・・五人目か、今度叔父さんと叔母さんに話を聞きに行くわ」
「いや、止めろよ!?拳信が贈り物すると凄まじいモノがくるから大変なんだよ!?フリじゃねぇからな!?本当に止めろよ!?お前らも止めろよ!?本当に頼むぞ!?」
前にそれで一週間旅行に行ってくる羽目になったんだよ!?お前はあの時、幾ら使いやがったと喚いているが俺達は気にせずスーパーを後にした。
「・・・正確に言えばあの時の旅行は俺だけで金を出した訳じゃないからな」
「それに関しては家族の思い出作りに甲斐性を出せないアイツが悪いので気にしなくて良いと思いますよ?」
「私達全員で旅行をプレゼントする為にお金を集めるとそのくらいになるのは当たり前」
葵は寧ろもっとプレゼントを用意したかったらしい。
「・・・葵って赤ちゃん好きよね~、まぁ私も嫌いじゃないけど、葵程ではないかな」
とか言いながら、結月もちびっ子達と結構駆けっ子してたりするから、似た者同士だと俺は思うが言わないでおく。
その後は特に寄り道せずに俺は実家に送って貰ったが、
「拳兄とお話したいな?」
「ん、お料理作りたい」
とりあえず、理那がいないので酒盛り無しならOKと許可を出して、二人にはウチで夕食を食べて貰った。
葵が肉じゃが、結月も魚の煮付けを作って俺は野菜を色々と入れた味噌汁を作って3人で夕食を頂いた。
二人の料理はとても美味しかったので、二人をお嫁さんに貰える男はさぞかし幸せ者だろうと褒めたら二人の密着度が上がった。
そんなに嬉しかったのだろうか?
流石に男が俺しかいない家に泊める事は出来ないので二人を玄関で見送った。
さぁ、明日はボス部屋の周回からスタートだ。
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