第2章 素材回収編

第19話 目標を決めた上で改めてスタート

 理那と話をした翌日、俺は食材の買い出しに出かけた。


 理那は一旦、病院に戻りダンジョン病緊急会議を行うと言って朝一に車で病院に戻って行った。


 調合書と薬草を持って、今いる全ての患者を救ってみせると燃えてたわ。


 そんな理那に対して俺は、近所の友人が勤めているスーパーに顔を出していた。


 「久しぶりだな、悠二」


 「拳信、おまっ!?普通過ぎるだろ!?ダンジョンに拳一つで特攻を仕掛けるとか、元ヤンじゃないお前がやってどうすんだよ!?」


 今、俺の前にいる友人の名前は片村 悠二かたむら ゆうじ、自分で言っているが若い頃にちょっとヤンチャをしていた事がある俺の友人で俺の無茶に何回か付き合った事もある親友だ。


 「・・・はぁ〜、昔からお前はダチだの家族だの大切な何かが絡むとめちゃくちゃやらかすよな・・・まぁ、俺も何回かお前のめちゃくちゃに付き合った事も付き合わされた事も、助けられた事だってあるけどよ・・・今回のは正直、今までの中で一番無謀だったぜ?」


 悠二の言葉に俺は首を捻りながら、


 「そうか?」


 としか言えなかった。


 「・・・しかも一見無謀でも、本人はしっかりと勝ち筋を創ってから始めてるから、タチが悪いんだよな・・・」


 その勝ち筋が思いも寄らない所から出てくるから予想も着かないしな・・・などと愚痴られてしまった。


 「まぁ、その事は置いといて・・・また食料を買い占めたいんだが大丈夫か?」


 「・・・今度は何日分だ?」


 悠二は可愛くもない拗ねた顔を俺に見せながら、俺に具体的な量を聞いてきた。


 「次は一週間分だ」


 悠二は真顔に戻り、


 「・・・何処まで行けたんだ?」


 「・・・五階層だ」


 悠二は天を仰ぎ、顔に手を当てて・・・


 「天国の正信叔父さん・・・拳信はどうやら修羅になる決心が付いてしまったようです」


 本当に力不足で申し訳ない・・・などと親父に向かって懺悔しだした。


 「失礼な・・・誰が鬼か」


 「お前だよ!?ケンカでも敵を容赦なく殴り飛ばすお前が鬼じゃなくて何なんだ!?魔王か!?お前の高校の渾名は拳鬼だったろ!?」


 そんな懐かしい渾名を出さないでくれなどと思いながら、俺は悠二との会話を商談に戻す。


 「出来れば明日には準備を終えて明後日には出発したいんだ」


 俺がそう言うと、


 「・・・お前なぁ・・・分かった、農家さんを色々と回ってみる、後、コレお前に渡しておくわ」


 そう言うと飯盒炊爨にそのレシピブックだった。


 詳しく書いてあるレシピブックを読んでから、俺は悠二にお礼を言う。


 「マジか、よく俺が欲しい物が分かったな・・・有り難く使わせてもらうよ」


 「お前、昔から米党の大食らいだったからなぁ~・・・昔、家に連れてきて家の食糧全部食われたのを思い出すわ・・・そん時のお袋と親父の顔もな」


 俺は懐かしい思い出を指摘され、少しむず痒い思いをしながら、


 「・・・そんなに呼びたいのならまた行ってやろう、今度は米を十二合炊いておく事だ」


 「ウチの炊飯器は5.5合までしか炊けねぇから!?」


 そんな馬鹿なやり取りをしながら、悠二は明日の午後には用意出来る事を俺に伝えて、もう仕事に戻ると言ってきたので、俺も一旦家に帰る事にした。


 俺は家に帰ると明後日に備えてステータスを確認する事にした。


 「ステータス」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帝 拳信


 レベル 22


 ジョブ 拳士


 身体能力値


 筋力 180


 反応 188


 敏捷 178


 器用さ 176


 魔力 87


 SP 0


 スキル

 闘気☆(MASTER)

 気功

 波動撃

 破邪

 加速

 先駆者

 鑑定

 エネミーサーチ

 トラップサーチ

 アイテムボックス


 アーツ

 テンペスタ・ナックル


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「・・・いつの間にかなんて項目が出来てるな・・・技を開発してしまったのか、それとも、この技が存在して俺が修得条件を満たしたのか・・・どっちだ?」


 俺は自分のステータス画面に、新たにアーツの項目がある事を確認して、頭を悩ませる。


 「今回のSPは全部闘気に入れたから、これで闘気のスキルはカンストしたな・・・次は気功だな」


 闘気を強化限界まで上げた所で、俺はスキルが増えていない事を確認した。


 「・・・何か増える為の条件でもあるのか?」


 俺はステータスのジョブの所を眺めながら、これからの戦闘をどう立ち回るかを考えていると、車の音が聞こえた。


 俺は昨日のカレーを温め直す為にキッチンで鍋に火をかけた。


 「ただいまー・・・おに、コホン、兄貴これから時間ある?同僚の先生達が兄貴と会って話してみたいって言うんだけど」


 俺がキッチンに立って残っている昨日のカレーを温め直している内に、理那は帰りの挨拶もそこそこにそう切り出した。


 「別に構わないけど、何でだ?とりあえずホレ、カレーは食べとけ」


 今日も可愛い妹は空腹らしく、可愛い音をお腹から響かせながら素直に返事をした。


 俺は聞こえないフリをして理那の前カレーを置く。


 暫くモクモクと二人でカレーを食べてから、理那は話の本題に入った。


 「・・・分かりやすく言うと、兄貴とスポンサー関係になりたいんだって、ダンジョン探索を支援する代わりに、薬になりそうな素材をこっちに流して欲しいって言う話」


 俺は理那の話を聞いて、色々と確認しなきゃいけないなと、心の中にメモする。


 「それは別に構わないけど、出来ればお前の所の院長先生にもしておきたいな・・・普段のお前がどういう感じなのか聞いてみたいしな・・・」


 「えっ!?ちょっ!?兄貴!?そういうアレじゃないからね!?皆、兄貴がどういう無茶してきたか知ってる人しかいないから!?大丈夫だからね!?」


 一生懸命に宥める理那に、HAHAHAと笑いながら俺は理那の車の助手席に乗った。


 理那は運転席に座り、運転しながらも俺を宥め続けていた。


 家から向かう途中で寄り道しながらも30分程で理那の職場の大学病院、そして、母が入院する病院を妹に連れられて訪ねた。


 俺はどんな事を言われるやらと、そんな事を考えながら中に入った。

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