第12話 初の三階層目

 二階層から三階層目に辿り着いて最初に目に入った風景が岩山だった。


 かと言って木は生えているが草むらは少ない、上からの奇襲・・・虫なんかのモンスターが出てくるかもしれない。


 一応、この階層には政府が派遣したダンジョン攻略隊が壊滅した階層でもあるが、この階層の情報はほとんど無いに等しい。


 ダンジョントラップの類もこの階層から確認されているので、俺は階段から下りてきたこの場で休憩をとってから、スキルを使いながらより注意して先に進んでいく。


 トラップサーチのスキルにより明らかになった罠を避けつつエネミーサーチを使って敵の位置を把握する。


 そして、トラップが無い所にいる敵に先制して攻撃を仕掛ける。


 「情報通りに猿もいるけど・・・犬か?あれ?」


 攻撃を仕掛けるべく、素早く敵に接敵すると犬の上に乗った猿がいた。


 「しかも杖みたいな枝を持ってるな・・・」


 しかも、武器持ちである。


 侮る事など出来ないと判断して即座に相手の機動力を潰しにいく。


 「せぇあ!!」


 俺の回し蹴りがモンキーライダー(仮名)を捉える。


 二匹ともまともに当たって吹っ飛ぶが仕留められるダメージではないと判断して俺は直ぐに追撃の為に間合いを詰める。


 すると、何故か再び犬に乗った猿は俺に向けて杖を振り下ろした。


 ボッ!!!?


 そんな空気の切る音を聞きながら杖の軌道から半身を横にしながら前に動き、厄介な猿の顔面に俺の右拳を炸裂させる。


 グシャァ!!?


 ヤンキー漫画のように猿の前歯を圧し折りながら猿をミサイルのようにぶっ飛ばすと何故か犬の方にもダメージが入り、犬もダウンしている。


 この状況に少々理解が出来なかった俺は、このモンスターがダンジョンに吸収されるのを待った。


 いつも通りに三分後にモンスターはダンジョンに吸収され、残ったのは枝と毛皮だった。


 「・・・やっぱり食える奴と食えない奴がいるよな~・・・まぁ、ワンコの肉も猿の肉も・・・低級のモンスターだと美味しくなさそうだし、気にせずこのまま進むか・・・この枝は薪代わりになるだろうか?」


 先程のモンスターが杖の代わりに使っていた物だから一応鑑定してみると、


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 アイテム名 枯れ枝の杖


 モンキーライダーが使用していた杖代わりの枯れ枝、通常の枝よりも僅かに魔法を使いやすくなるが、その差を感じとれる人は極僅か


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 ・・・どうやら初の装備系ドロップだったようだが、素材を大差ないアイテムのようだ。


 まぁ、ゲームでも序盤はこんなモノだよなと思いつつ俺はエネミーサーチとトラップサーチを使って安全にモンスターを狩る事にした。


 理由は俺の成長速度を考えると、このまましっかりと戦いながら下りて行けば安全な探索が可能だと判断したからだ。


 現にまだレベルアップしていると感覚で分かる以上、今はこの楽しさに身を任せて狩りをするのが良いだろう。


 母の病気を一刻も早く治したいが、殺られてしまっては亡くなってしまった父にも、残してしまう母にも申し訳が立たなくなってしまう。


 だからなるべく強くなれる努力をしながらダンジョンを進んでいく、そう俺は判断した。


 そうして俺がトラップを避けつつこの階層を探索して、見敵必殺を続けていくと途中で宝箱っぽいモノを見つけた。


 「・・・これは遂に来たか?まぁ、俺の目的のブツがここで手に入るようなら、誰も不幸にはならないと思うが・・・」


 トラップサーチには周囲にトラップの反応は無い・・・俺は慎重に近づき手にはモンキーライダーから手に入れた枝を握り、ちょっと距離をとって宝箱をペシペシ叩く。


 「・・・枝を上手く使えば開けれそうだな」


 俺はもう一本枝を取り出して宝箱を開ける。


 ここまで慎重なのは現在の俺が宝箱に設置してあるトラップを解除する事が出来ないからだ。


 そして、ダンジョン=トラップ、宝箱=トラップの公式を俺は知っているからこそ、こうして慎重に宝箱を開けるのである。


 俺はゆっくりと宝箱の蓋を持ち上げて、開けると同時に距離を取ると、


 「・・・何も起こらない?大丈夫なのか?」


 そう言ってゆっくりと近づくと中には俺が着けている篭手よりも良さそうな物が入っていた。


 「・・・とりあえず、冷静に・・・鑑定」


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 アイテム名 蒼黒の篭手ブルーガントレット


 ミスリルと魔鉄を用いて造られた一品、とても頑丈でしっかりとした造りが特徴でミスリルも使って造られている為、魔力の通りも非常にスムーズな品。


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 俺は鑑定の説明文の何処にもの一言が入っていない事を念入りに確認してから、この篭手を装着した。


 「・・・良し!!何も無いな!次は使ってみるか!!」


 新しい装備に少しウキウキしながら俺はダンジョンを進みつつ敵を探す。


 この階層で既にレベルは3つは上がっていると考えると、この階層のモンスターだととりあえずワンパンで終わってしまう気がしてならない。


 そんな事を考えていると目の前に先程よりも大きい宝箱が目に入った。


 その後ろには階段があり、次の階層に進むためのものだろう。


 そこでネットの動画で偶に見かけるアルパカのような顔で俺はあることを思いつく。


 「・・・この宝箱、鑑定すれば良いんじゃね?」


 寧ろなんで今までそこに気付くことが出来なかったのか、自分で自分の事が不思議で仕方ない。


 「とりあえず、鑑定と・・・」


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 モンスター名 トラップボックス


 ミミックの幼生体、犠牲者を捕食する事で成体へと成長する。

 宝箱の中身はまだ大した事は無い。


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 「ミミックって成長するんだ・・・」


 思わずそんな言葉が漏れた。


 そして、安全の為に距離をとって鑑定したので、


 「ギシャァァァァ!!!?」


 「おっと?・・・うりゃあ!!」


 自分の正体がバレたと分かったトラップボックスは、自分から擬態を解いて襲いかかってきたが、距離をとっていた俺にあっさりとカウンターを食らっていた。


 「グゲァァァ!?」


 俺は闘気と気功をいつも通りに発動して頑丈そうなトラップボックスに、


 「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」


 ラッシュ連撃を繰り出してみた。


 結果・・・


 「グギァァァァァァ!!!?」


 トラップボックスは粉微塵に粉砕され、そこに残ったのは魔石と貴金属のような物だった。


 それにまたレベルが上がった感覚が俺の中を走る。


 「・・・各階層に番人がいるんだろうか?そんな話は聞いた事が無いが・・・まぁ、そう予想しておいた方が色々と安全か・・・それにしてもこの篭手、実に良いな、負担が少ない」


 そう言って俺はドロップした魔石とアイテムを拾い、アイテムボックスに入れて階段を下りて次の階層に向かった。

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