第10話 地上での休息
剣兎を仕留めて無事に地上に戻ってきた俺は駐屯地の素材買い取り所を尋ねる。
「すいません、買い取りをお願いしても?」
中にいた受付は夜7時という遅い時間であるのにも関わらず、
「構いませんよ、素材を見せて頂けますか?」
受付にいた女性は嫌な顔をせずに俺の応対をしてくれた。
「・・・シマウマにしろ兎にしろ角だけで29本ですか・・・そして、お肉もそれなりですね3・・・いや、5キロはありますか・・・近隣のスーパーに直ぐに卸さないと勿体ないですね・・・そして、魔石が多数・・・こちらは小ぶりなモノが多いのですが二階層をメインで探索してましたか?」
彼女はどうやら鑑定のスキルを持っているようでしっかりとした鑑定額を付けられるようだ。
「それとこの角だけ種類が違いますし始めて見ますが新種ですか?ソードラビットとやらのお肉だけないですし」
彼女はしっかりと俺が肉だけを抱え込んでいる事を察しているようだ。
俺は顔を逸しながら、
「一階層で出てきた角兎の上位個体らしくてな・・・仲間を呼ばれたりして少し時間が掛かったが問題なく倒したよ」
彼女は少しジト目を向けつつも、
「まぁ、探索した人が自分で食べるなら仕方ないですよね、私も彼に今度お願いしてみようかな~」
彼女はそんな事を言いながら奥に行って、恐らく彼女の警備を兼ねている人だろう、その人と一緒にお金を持ってきた。
「今回の査定額は58000円ですね、お肉はもう少し早い時間に持ってきてくれればもっと良い値段をつける事が出来たのですけど、今の時間だとこのくらいのお値段になってしまいます」
それでもまぁ、肉だけで8000円か・・・角が30000で魔石が20000の価値と考えると中々いい商売かもしれないな・・・死ぬ危険性さえ無かったら。
そんな事を考えながら俺は駐屯地を後にして近くにある素泊まり可能な旅館を訪ねた。
名前は黒曜館というらしい、温泉もあるようだ。
「いらっしゃいませ、お一人ですか?この時間からだと素泊まりになってしまいますが、如何致しますか?」
女将らしき女性が俺にそう尋ねるので、
「それで頼む、今日一晩だけでいい、明日の朝一にはチェックアウトする」
俺はそう答えて先に宿泊代を払ってしまう旨を伝える。
「かしこまりました、朝はバイキングになるのですがそちらはご利用なさいますか?」
俺が頷くと、
「では、全部で5800円になります」
俺は女将に代金を渡して、部屋へと案内される。
「こちらのお部屋をお使いください、また何かお申し付けがあれば部屋の電話かカウンターの方に来ていただければ対応いたしますので・・・」
俺は女将にそう言えばと質問する。
「食材の持ち込みで厨房を貸してもらう事は出来ますか?」
女将は少し考えて、
「ちょっと厨房にいる人に聞いて来ますね、少しお時間もかかると思いますので先に温泉でも如何でしょうか?」
それならばと俺は調理してほしい食材を渡す。
「このお肉を調理してほしいのですけど、余ったらそちらで処理して頂けたら・・・」
そう言って俺はソードラビットの肉を渡した。
「こちらのお肉を調理すればよろしいのですね?畏まりました」
そう言って女将は部屋を後にした。
俺も着替えをアイテムボックスから取り出して入浴セットを用意して温泉に浸かりに行った。
戻ってきた時には遅い晩ごはんの用意はされており、大将の料理に舌鼓を打ったが大将的には不満らしく、次はシチューで作りたいから今度は早めに持ってくるように言われた。
遠回しに俺の仕事を勘づいて、心配してくれたのだと受け取り俺は次に来るときは、と約束した。
その後は布団に入り、秒で眠りについてしまった。
また明日も頑張ろうと眠りに着く前に唯一考えた事だった。
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