第7話 いざ本番
上野動物園跡地にある駐屯地を経由して上野動物園ダンジョン内部に入り、早速ダンジョン探索者としての活動を開始した。
一層目は階段、恐らくパンダか何かが展示されていた檻の扉の内部がダンジョンの入口の階段になっていてそこを下りて来たのだが、地下であるはずなのにまるで山の中のように木々が生い茂っていた。
「・・・話には聞いていたが、実際に見ると自分の中の常識が壊れていくな・・・まぁ、ゲームとかと同じでダンジョンだし、で、済ませよう」
そう言って俺は所々突起が目立つ、中々攻撃的な篭手を身に着ける。
俺の選んだジョブは拳士、ジョブスキルは打撃の技能・・・このスキルは拳や蹴りの威力が3倍になる上に習熟速度も3倍になる今のレベルから考えると破格のスキルだ。
最初は練習として今の階層で練習する必要があるが、それでも3倍の恩恵はデカいだろう。
最初の内に上げれるだけレベルを上げて後半の攻略に活かせるように今の内に狩りのノウハウを憶えてしまう事を俺は考えた。
何故なら一階層と二階層はトラップの類が無いらしいから戦闘に集中出来る。
いきなり三階層まで潜れるかもしれないがそれだとその先の未来が見えなくなる。
俺の目的は不治の病を治す万能薬を手に入れる事、母の病を治す方法がこんな所にあったら母はとっくの昔に完治しているだろう。
俺はそう思い返して俺は山の中の森のような場所に入っていく。
「・・・微妙に道のような場所があるから、想像よりは歩くのは楽だな」
そんな事を考えながら周囲を注意深く警戒しながら俺は木々の間歩いて行くと、
ガサ!!ガサ!!
前方の茂みが独り手に動き出した。
俺は拳を握り、だけど適度に力を抜く事を意識しながら前方の茂みを警戒する。
すると茂みから飛び出して来たのは、角が無ければ可愛らしいダックスフントぐらいの大きさの兎だった。
俺はまずその大きい角を使った攻撃を警戒した。
何故ならあの角はよく刺さるらしく少ないが死者も出ているからだ。
警戒しない理由は無く、更にコチラは初戦闘だ。
無駄な時間を多少でも使ってでも安全を取るのがベターだろう。
因みに角の長さは1メートルも無く凡そ50センチくらいだろうか・・・何れにせよ人間からすれば凶器でしかない。
俺は重心が低くなり過ぎないように右手軽く握って右半身を前に、左手を腰の高さで軽く拳を作り左半身を後ろに構えて、相手の事を注視しながら跳ねるまではいかないけど膝からつま先にかけて、脱力と瞬発力を意識してステップに近いモノをリズミカルに刻んだ。
相手の角兎も足が忙しなく動いている、恐らく攻撃の予兆だろう。
高まっていく緊張を感じとりながら、俺は角兎の動きを待っていると、
「ピュイイイイ!!!」
角兎は可愛らしい雄叫びを上げながら突撃してきた。
どうやら腹部を狙って突進してきたようだが、
「甘い!!」
俺はその角を身を捻りながら右手でキャッチして、そのまま両手でしっかりと持ち、横に一回転振り回した後にそのまま縦に振り下ろした。
当然、角兎はダメージを受けて角も折れてしまうが、俺は容赦なく動けない角兎に拳を振り下ろし角兎の頭部にダメージを与えたが・・・
グシャ!!!?
瓦割りのように振り下ろした俺の拳は、硬そうに見えた兎の頭部を簡単に叩き潰した事で、可愛らしい兎がスプラッタとなるシーンを、俺は無慈悲に作り出してしまった。
俺が修羅になった証拠である返り血が、俺の衣服に付着している。
だが、しっかりと戦闘は勝利出来たようで、ゲームと違いアナウンスなんてモノは流れないが、身体から力が溢れてくる。
「ステータスオープン」
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帝 拳信
ジョブ 拳士
身体能力値
レベル2
筋力 42
反応 43
敏捷 40
器用さ 40
魔力 12
SP 3
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各身体能力値が上昇しているのを確認している時にそれは起きた。
ネット上でしか書き込まれておらず、日本政府も現象は確認しているが、どういった現象なのかはまだ把握していない現象だ。
「・・・これがダンジョンに喰われる、か・・・想像以上に恐ろしく感じるな」
地面がまるで意思を持つように角兎の死体を飲み込んでいく、周辺の地面には特に何も無いようだが、角兎を飲み込む瞬間は正しく丸呑みにしてるように見える。
「今回のドロップアイテムは角兎の角と肉と・・・石?これが噂の魔石かな?」
俺はアイテムボックスにドロップアイテムを回収しながら、始めて見る宝石とは違った石を手に取る。
「・・・鑑定」
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品名 角兎の魔石
品質 F
概要 角兎の内部にある魔石、魔石とは主にモンスターの余剰魔力が体内で物質化したモノで、その中にモンスターの魔力を秘めている。
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俺が鑑定のスキルで石を調べると、やはりこれは魔石だった。
このような小石サイズのモノでも、現在日本政府は買い取りを行っており、30匹分集めて売ればサラリーマンの月収くらいにはなるらしい。
かと言ってもそこは堅実だと言われる日本人、会社勤めの人はそう簡単に辞めたりしないだろう。
ましてやまだダンジョンが現れてから3年程しか経っていない。
どの程度稼げるようになるのか、それが分からない限りそんな無茶をする奴は少ないだろう。
俺みたいな理由でも無ければ・・・
俺はもう少しこの階層で狩りをする事にして、探索を再開した。
肉は森なので開けた場所を探し、条件にあった場所を見つけたのでそこで火を起こして塩胡椒で味付けして直火で炙った。
兎の肉は生臭いという話を聞いたりもしたが、この兎の肉はそう言った事も無く、非常にスッキリした肉汁が美味しいお肉だった。
この階層で狩った獲物は6匹、朝の8時に入って現在正午の時間である。
外の山でこの量を狩ることが出来れば大したモノかもしれないが、ここは戦闘を強制するダンジョンの中だ。
レベルも4にまで上がったし・・・いや?レベルが上がるのが聞いてた以上に早いような・・・そう言えば適正が高いジョブを選んだ後の情報は集めてなかったな・・・まぁ、上がりが早い事は良いことだからそういう事にしとこう、大人は都合の良い事から目を背けるモノだからな!
そんな考えに蓋をして俺は途中で見つけた次の階層に進む階段を下りて行った。
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