第6話外伝 自衛隊員の忸怩たる想い
私は陸上自衛隊 ダンジョン攻略隊の元隊員の上村という者だ。
私の中に今ある感情を言葉として表すのなら、それは自分自身の無力さに対する絶望感についてしかない。
ダンジョンが現れたあの日・・・私は密かに喜んでしまった、毎日の訓練の成果を示す絶好の場所が出来てしまった事を・・・ダンジョンというモノの内部がどれだけ過酷か・・・その事を知っていたのにも関わらず、年甲斐もなくゲームが現実になったと喜んでしまったのだ。
その内部が真の弱肉強食であることも知っていたのに、私は浮かれて最初期のダンジョン攻略隊に志願していた。
一層目や二層目は大丈夫だった、何故なら出てきたのは角を生やした兎とシマウマだったから・・・問題になったのは三層目からだった。
特別強いモンスターは出てきてはいない、出てきたのは少々俊敏な手長猿のようなモンスターだった。
だが、このモンスターは酷く知恵が廻り、三層目から隠されて設置されるようになった落とし穴などのトラップを利用して攻めてくるのだ。
そして、この手長猿は何やら見えない爪のようなモノを伸ばして攻略隊のメンバーを引き裂いていた。
その結果、我々は敗走せざる負えなくなり、その道中でも群れたモンスターに出会し壊滅状態になって自分を含めた3名しか生き残る事が出来なかった。
それから、私は傷を癒やして再度ダンジョンに挑もうとしたがPTSDを発症してしまい、再挑戦を断念するしかなかった。
仲間の死がここまで心にくるとは・・・私もやはり平和な国日本の国民なのだなと自嘲気味に思ってしまった。
仲間を、そして、自分の命を失わないように私が出来る事はこうして恥を忍んで皆に当時の状況を伝えていく事だろう。
願わくば先程入っていった彼にも幸運がありますように・・・私が出来る事はこうして祈るだけである。
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