(3)

「え……えっと……貴方たち……誰?」

「誰って、言うまでもない。この国の冒険者ギルドの最高幹部『よりよき明日の為の評議会カウンシル・オブ・ア・ベター・トゥモロー』だ」

 冒険者ギルドの幹部が皆殺しにされた後、例によって、飲兵衛の路上生活を送っていたら……寝てる間に、いつの間にか移転してたらしい「冒険者ギルド本部」と称する貸店舗に連行されていて……そこに居たのは……。

 この前死んだ、冒険者ギルド幹部より少し若いように見えない事も無いが……やっぱり爺さんとしか呼べない年齢の、良く知らない男ども。

「壊滅した筈じゃ……?」

「死んだのは、我々の前任者どもだ。我々は新しい最高幹部評議会だ」

「は……はぁ……」

「まぁ、人間の本性は、調子こいてる時とドン底に堕ちた時の両方で明らかになる、とは言うが……前任者どもは、どっちの場合も最悪な連中だった。その点はお詫びする」

「おい、若い女に頭下げるなんて……男としての誇りは無いのか?」

「うるさいな」

「あ……あの……それで……その……?」

「と言う訳で、冒険者ランキング1位『鋼の男』を君に倒して欲しい」

「はぁ?」

「倒せ。これは命令だ」

「無理です」

「なら、玉砕しろ」

「何で?」

「命令だ。異議は認めん」

 えっと……私が話してる(会話になってない気がするけど)、この爺さん達……本当に人間?

 なんか……定型パターンの動きや会話しか出来ない安物の人造人間ホムンクルスなんて事は……?

 えっと……。

 ああ、マズい。

 酒びたりのせいで、魔力検知の能力も錆び付いてしまってる。

 精神を集中させ……爺さんたちが本当に人間なのかを「魔力検知」能力で探ろうとし……。

 ん?

「あぶないッ‼」

 ドゴオッ‼

「な……」

「こ……これは……?」

 私は、攻撃魔法の気配を察知して……魔法防壁を展開。

 その結果……。

「うわああああッ‼」

「おい、誰か、浮遊魔法ッ‼」

 壁や天井や床が粉々に砕け、私と爺さんたちは落下。

 一応、どこからともなく飛んで来た火炎弾ファイアーボールは砕け散ったけど……。

 どうやら、私が「魔力は昔のまま、ただ、制御出来なくなってるだけ」の状態で魔法防壁を展開したせいで、そのプチ暴走状態の魔法防壁により、砕け散ったらマズいモノまで砕け散ったらしい。

「流石は偽物とは言え冒険者ギルド最高幹部を名乗るだけは有るな。中々にやるようだ」

 冒険者ギルド本部と称する貸店舗が瓦礫と化した後、その声のした方向を見ると、大通りの反対側に有る別の貸店舗の屋上から、魔法の拡声器を使って、そう大声で怒鳴り散らしている、これまで爺さんたちの一団が居た。

「あれ……誰?」

「偽の冒険者ギルド最高幹部どもだ」

「へっ?」

 ……えっと……。

 ……つまり……その……。

 ああ、冒険者ギルドそのものが分裂して、この爺さんたちと、あっちの爺さんたちは、別の派閥な訳か……。

「おのれ、偽物どもめ。どっちが本物かわからせてやる」

「おい、メスガキわからせならともかく、爺ィわからせなんて需要有るのか?」

「うるさい、やるぞ……」

 けど……その時……。

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