第四章:A Better Tomorrow/駄目爺ィどもの挽歌

(1)

「逃げろ〜ッ‼」

 魔法防壁を展開していたらしい幹部のお爺さんが、そう叫んだ次の瞬間……。

 魔法防壁は完全に砕け散り……。

 黒装束達が次々と落下&スーパーヒーロー着地。

「ぐえっ‼」

 ただし1名は除く。

 たまたま、幹部のお爺さんの内の1人の頭上に居た黒装束が、そのお爺さんの脳天に魔力を込めたドロップキック。

 そのお爺さんの頭は、あっさり砕け散る。

「おのれッ‼ 若造どもがッ‼ いい気になりおってッ‼」

 気功拳士のお爺さんが、黒装束の1人を殴り付け……。

 命中。

 流石は……元は一流の冒険者。不意打ちでも食らわない限りは……腕前の差は圧倒的……。

 ちゅど〜ん♪

 爆音と共に、気功拳士のお爺さんは……不意打ちを食らって、全身丸焦げになり倒れた。

 な……なんつ〜。

 さっきの「葬除屋」さん達が「魔法の人間爆弾」に変えられてた事で気付くべきだった……。

 この人達は……全員が……自分を「魔法の人間爆弾」に変えてる。

 それも……どうやら、自分を殺した相手の方向に自動的に爆風を向けるか、死ぬ間際に爆風の向きを変える事が出来る……「魔法の指向性人間爆弾」に……。

「な……な……な……な……な……何で……こんな……?」

「名乗りが遅れたな……」

 黒装束のリーダー格らしいの(黒装束で見分けが付きにくいけど)が、そう言った。

「我らが規律おきて、もはや鋼鉄てつならず。我らが心、もはや空ならず。我ら、ただ、怨念の悪鬼オニッ‼」

 え……えっと……何で、何で、何で、イヤアアアア、何で、暗殺者アサシンギルドの生き残りとやらが……冒険者ギルドの幹部を襲撃……。

 それに、暗殺者アサシンギルド所属の暗殺者の決め台詞は「我らが規律おきて、元より鋼鉄てつなり。我らが心、既に空なり。お命頂戴‼」だった筈……。

「あ……あの……」

「何だッ⁉」

 私は、生き残りの幹部の1人の服の袖を引っぱって訊く。

「何で、暗殺者アサシンギルドが壊滅してて……その生き残りに、冒険者ギルドの幹部が狙われてんですかッ⁉」

「だ・か・ら、お前が言った『アイデア』を誰も考え付かなかったと思ってるのか?」

「へっ?」

「我々は、『鋼の男』の暗殺を暗殺者アサシンギルドに依頼した。その結果、暗殺者アサシンギルドのエース級は、ほぼ全員皆殺し。暗殺者アサシンギルドの本部も突き止められた挙句……」

「えっ? それじゃ……」

 おい、待て……。

「じゃあ、怨みは、『鋼の男』に向ければ、いいじゃないッ‼」

暗殺者アサシンとしての職業倫理なら、その通りだ。しかし……冒険者ギルドの依頼を受けたせいで、暗殺者アサシンギルドは壊滅した。我らは……最早、暗殺者アサシンでさえない、単なるならず者だッ‼」

 開き直るなッ‼

「現実主義に徹して、生き残りでは、どうやっても倒せない『鋼の男』ではなく、お前ら冒険者ギルドの幹部を倒して、我らが怨みを晴らす事にしたッ‼ 警備厳重な冒険者ギルド本部から、揃ってのこのこ出て来たのが運の尽きと思えッ‼」

 え……。

 待って……。

 冒険者ギルドの本部の建物が使えなくなったのは……。

「お前のせいかッ‼」

 幹部のお爺さん達が一斉に私に向けて罵声を浴びせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る