第2話 彼女の家に向かう

 朝のホームルーム中に席替えをした。その結果、一度も話したことがない前田知美まえだともみさんと隣の席になる。


その後の1限で異変が起こった。突如として、前田さんを除く女子全員が男子に対して肉食的行動をとったのだ。


彼女がその謎現象を起こした張本人らしいので、前田さんの自宅でお母さんを交えて事情を聴くことにした。



 時は流れ、放課後になった。教室での帰りのホームルームが済み、前田さんが帰る準備を終えて席を立ったのに合わせ、俺も続く。


「ねぇ神田かんだ君。お願いがあるんだけど」

彼女が急に立ち止まって振り返る。


「なんだ?」


「これからは、私に触らないでちょうだい」


女子に触るのはセクハラだし、する訳ないんだが…。


「…“触る”で思い出したぞ。あの時の声はどういうつもりだったんだ?」


俺の手と彼女の手が軽く触れ合った瞬間、『やあぁん♡』と大きくてエロい声を出された件になる。


「あれは不可抗力よ。それもちゃんと家で説明するから」


不可抗力って…。俺、バカにされてる?



 前田さんに触れないよう、距離を空けて付いて行く。

駅に着いたとなると…、彼女は電車通学か。


「3駅過ぎたら降りるからね」


「わかった…」

触れる可能性を考え、隣同士で座るのは厳禁だな。数席空けておくか。


3駅通り過ぎて次の駅がアナウンスされた時に、前田さんは座席から立ち上がり車両の出入口に向かう。俺は念のため、別の出入り口で降りるか。


彼女が停車する際にバランスを崩し、俺に触れる可能性があるからだ。

外であんなエロい声を出されたら、即痴漢扱いされるぞ…。



 電車を降りてからは、不審者に間違われないように意識しながら前田さんに付いて行く。…そして、ある一軒家で彼女は足を止める。


「…ここが私の家。お母さんはいるから、遠慮なく訊いて」


彼女の言う通り、駐車場に白い車が1台ある。2台分のスペースがあるけど…?


「空いたスペースには、お父さんの車があるのよ。出勤で使ってるから、今はないけどね」


俺の疑問を予想したのか、前田さんが解説する。


「そうなのか…」


解説後、彼女が門扉を開けて家に入ろうとするので俺も続くんだが…。


女子の家って初めて入るな。“付き合ったら行く機会がある”と漠然と思ったものだが、まさか初めて話した日に行くことができるとは…。


これが『縁』ってやつか。“人との縁は大切に“と両親に言われたが、前田さんの場合はどうなるんだろう? 知り合って後悔することがあったりする…?


…なんて不安に思いながら、彼女の家に入るのだ。

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