周りを強制痴女化させるエロい声を聴いた俺は、彼女を作ることにした

あかせ

第1話 女子が男子を襲い始める!?

 朝のホームルームが始まる時間になり、担任の水橋みずはし先生が入ってきた。


「連絡の前に…、席替えをしたいと思うんだけど良いかしら?」

そう言って、先生はクラスを見渡す。


唐突だな…。何か理由があるのか?

クラスメートも似たようなことを思って顔に出ているのか、先生が話を続ける。


「君達がこの高校に入学して、2か月ぐらい経つわね。GWゴールデンウィーク明けすぐに、個人面談をやったでしょ?」


……そういえばやったな。俺は話すことがなかったので、規定時間より早めに終了したっけ。印象が薄すぎて、ほぼ忘れていたぞ。


「その個人面談で『視力が悪いから席替えして欲しい』って声があったのよ。番号順で座ると、個人の事情を考慮できないからね…」


言われてみれば、後ろの席でメガネをかけたクラスメートはちゃんと見えているのか? どの程度悪いかは知らないが、不便な思いをしているのは間違いないだろう。


「理由は説明したから、始めるわよ。前を希望する人は自由席にして、残りの人達はくじ引きで決めるからね」


俺は視力に困ってないので、くじに全てを託すとしよう。



 くじ引きの結果、俺の隣は前田知美まえだともみさんになった。今まで一度も話したことがないな…。


神田かんだじゅん君よね? これからよろしく」

笑顔で挨拶してくれた前田さん。


「俺の事知ってるの? 一度も話したことないのに…」


「話したことなくても、顔と名前ぐらいはわかるよ」


俺はくじの結果が黒板に書かれたことで、彼女の名前を知ったんだが…。



 その後、連絡事項を話す先生。……大したことは言ってないな。先生もそれを見越して、今日席替えをしたかもしれない。


1限も水橋先生の担当なので、ホームルーム後すぐに開始される。


先生の担当は現代文だ。板書をノートに書いたり、プリントをやるのが主な流れだ。退屈だが楽でもあるので、文句は言う気はない。



 「あっ…」

プリントをこなしている時、隣の席の前田さんが小さい声を発す。


疑問に思って彼女のほうを観ると、俺の足元付近を凝視している。

視線を辿ってみると…、消しゴムが落ちているな。


なるほど、うっかり落とした時に声が出たのか。そばにあるし、拾っておこう。

そう思って拾ったところ、彼女が手を差し出してきた。


前田さんが気付いてなかったら、こっそり机の上に置いただろう。

しかし拾うところを見られたんだから、彼女に直接渡すのが正しいよな。


前田さんの手に消しゴムを置いた時、手と手が少し触れあう。その瞬間…。


「やあぁん♡」

彼女の大きくてエロい声が、教室中に響き渡る。


おいおい、どういうつもりだ? その理由を前田さんに訊こうと思った時…。



 「高橋君、前から好きでした。付き合って下さい!」

授業中の教室で突然、告白が始まった。


声のほうを観ると、高橋君の隣にいる女子が言ったようだ。

告白を受けた彼は、呆気に取られている。


「ねぇ、上原。あんた体格良さそうだよね…。脱いでくれない?」


彼の前の席にいる、胸が大きくて男子の間で有名な櫻田さんが振り返り、制服越しに上原君の体に触れる。


「えーと…」

彼は満更でもなさそうだ。櫻田さん、美人だからな。


その後も、女子が男子に積極的にアタックするシーンが目立つ。

“逆セクハラ”と思われてもおかしくない発言やボディタッチも見受けられる。


基本的に隣の席同士で行われているが、中には席を立って移動する女子もいる。


俺含む男子は何ともないようで、戸惑うか女子に合わせてるケースが大半だな。


夢みたいな光景だが、今は授業中だ。さっきから俯いている先生がキレるのでは…?


「みんなズルいわよ。私も男の子と話した~い!」

子供のように駄々をこね始める先生。


…どういうことだ? さっきから変だぞ。女子全員がおかしくなっている?


ということは、前田さんも…? そう思って彼女のほうを観る。


「神田君。女子のみんながおかしくなったの、私のせいなんだ」

バツが悪そうな顔をする前田さん。


「…どういう事なの?」

あれ? 彼女はおかしくなってない?


「理由を説明しても、信じてくれるかどうか…。当の私も、神田君に触られて確信したんだけどね」


「…意味が分からないんだけど?」


「じき元に戻ると思うから、心配しないで」


前田さんが言った通り、授業終了のチャイムが鳴った時に女子全員は正気を取り戻したのだった…。


理由は不明だが、男子も今回の異常事態はわかっているはずなので、この件に詳しく触れる人はいないだろう。…多分な。



 「前田さん。さっきのは何なの?」

現代文終了後の休憩時間、俺は彼女を問い詰める。


前田さんを除く女子全員がおかしくなったんだ。気になるのは当然の話だろう?


「できれば、忘れて欲しいんだけど…」


「無理だな。前田さんのせいなら、話す義務があると思うが」


「…わかったわよ。今日の放課後、私の家に寄ってくれる?」

彼女は観念したようだ。


「何で家に寄る必要がある? 今ここで説明してくれよ」


「今回の件、お母さんにも話すつもりなの。私よりもお母さんのほうが詳しいはずだから」


お母さんのほうが詳しい…? 家系的な問題なのか?


「わかった。今日は予定がないし、前田さんの家に寄らせてもらう」


「うん、そうして」

彼女はそう言ってから、携帯を操作する。


きっと、お母さんに俺の来訪を伝えているんだな…。



 さっきの謎現象と前田さんに、どういう繋がりがあるのか?

彼女と彼女のお母さんに、根掘り葉掘り訊くとしよう。

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