お互いが愛おしい

みずきと創は、一緒にいると楽しいというより、会えばお互いを愛おしく思っていた。


「なかなか会えなくてごめんね」

「ううん」

今日は、2人で映画館に行った。

手を絆いで、席に座る。

「ね、映画ってよく見に来たりする?」

「いや、すごいひさしぶり」

「私も」

「じゃ、別の場所が良かったんじゃ…」

「かな」

2人は笑った。


暗くなって映画が始まる。

みずきと創は、お互いの手を、触れては離し、触れては離しを繰り返していた。

手が触れ会うだけで、キスと同じくらい、感じていた。

なので、映画の内容はさっぱり入ってこなかった。


歩いて手を繋ぐだけで、キスをするだけで、みずきは、前の彼氏といるより、ずっと心地良いと実感した。

創もまた、今までの彼女よりも、みずきを可愛く思っていた。

お互い、特別なんだと確信に近い感じで思っていた。


別の日、二人でカラオケに行った

「俺、下手くそだよ?」

「うん、聞きたい」

「うん、て…」

創が笑う。

「いつも何歌ってる?」

「俺、一択だから」

「一択?」

「そ。"猫"一択」

「すごくいいっ」


「みずきは?」

「うーん、YOASOBIが好き」

「好き?」

「ん?」

「俺?」

「…違う」

「何で?」

「じゃ、好き」

「じゃ、って…。もう…」

創は、みずきを抱きしめた。

みずきも抱きしめ返す。

「大好き」

「うん、私も」

「…今日、どこか泊まらない?」

「うん…」

2人はキスをした。


創が学校とバイトでヘトヘトだと言ってたとおり、会う回数は、多くはなかった。

ラインの返信も来ない事もあった。

みずきは、2歳年上と言う事と、前の彼女が創に会いたいと言い過ぎて別れたので、寂しと素直に言い出せなかった。


次第に、会ったときの嬉しさと、待っている寂しさの天秤がぐらぐらと不安定になり始めた。

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