第3話 異世界といったら、魔石じゃないの?

「ユウリ。たしかにドラゴンはいるけど、とても大人しい生き物なの。ドラゴンと戦うなんて、聞いたことがないわ」


 ララがくすくすと笑うと、セルギ国王も「ワッハッハ!」とお腹に手を当てて笑っている。


 いや、そっちの説明不足だろ。ララはいいとしても、セルギ国王が笑うと、なんだか腹が立つ。


「じゃあ、何をして国を救えって言うんですか?」


 怒りを抑えて僕がくと、「こちらへ来たまえ」とセルギ国王は歩き出した。部屋の奥には、大きな赤いカーテンがある。


「ここじゃよ」セルギ国王のあとについてカーテンをくぐると、そこには僕の身長と同じくらいの、大きな石板があった。


「これは、我が国の宝とも言える石板なんじゃ。アーティファクト古代遺物というものを知っておるか?」


「あぁ、はい」


 まぁ、漫画で読んだことがある、くらいだけど……。たしか、古代の遺跡とかにあるもので、すごい力を持っている武器が多かったような……。


「石板には、12個の穴があいておる。ここにレアストーンと呼ばれる宝石をはめ込むことで、この国に結界を張れるそうでな。お主には、そのレアストーンを集めてほしいのじゃ」


「宝石? 魔石じゃなくて?」


 僕が言うと、2人はきょとんとした顔をして、首をかしげる。


「魔石とは、なんじゃ?」


 えぇ!? 異世界といったら、魔石じゃないの?


「い、いえ、なんでもないです……。続けてください……」


 よけいなことは言わないほうがいいだろう。話がややこしくなる。


「よろしい。よく聞いておけよ。お主が今から集めるのは、

『アウイナイト』

『アレキサンドライト』

『カシミールサファイア』

『コンクパール』

『タンザナイト』

『トラピッチェエメラルド』

『パパラチアサファイア』

『パライバトルマリン』

『フォスフォフィライト』

『レッドダイヤモンド』

『レッドベリル』

『ロードクロサイト』

 この12の宝石じゃ。まぁ、知らない名前を覚えるのは大変じゃろうから、ララに聞くがいい」


 ん? なんか、聞いたことがあるのが、いくつかあったぞ。僕の世界にある宝石と一緒ってことかな。


「それで、結界を張るって、なんのために必要なんですか?」


「それは……」


 セルギ国王は眉間みけんにしわを寄せた。


「この国を、人間たちから守るためじゃよ」


「え? 人間? この世界にも、人間がいるんですか?」


「あぁ、いるが……。この世界の人間たちは凶暴でな。この獣人の国を乗っ取り、獣人たちを奴隷にしようとしているんじゃよ」


「そんな……」


「他の国も次々と、人間の手によって滅ぼされておる。早く何か、手を打たねばならん。そこでお主にきてもらったのじゃ」


 こうやって話をしていると獣人も、人間と変わらないのに……。僕と同じ人間が、そんなことをしようとしているなんて、信じられない。


「でも、なんで人間の僕が、ここに連れてこられたんですか?」


「それは私が説明するわ」


 ララは、石板の横にあるテーブルへ向かって歩いて行く。


「これを使うためよ」


 ララがテーブルの上の白い布をめくると、古めかしい銃と盾がある。


「これもね、アーティファクトなの。私は、剣の腕には自信があるんだけど……。レアストーンを集めるためには、人間がいる地域や、危険な場所へも入らないといけないの。そうなると、もっと強い武器が必要なんだけど……。私たちは、アーティファクトや宝石には触れないの」


「触れない? なんで?」


「アーティファクトや宝石ってね、すごく強い力を持ってるの。だから、私たち獣人には毒になるんだけど、人間はなんともないんだって。それで、ユウリに力を貸してほしくて、来てもらったんだ。ユウリは向こうの世界が好きじゃないんでしょ? だったら、こっちの世界にいたらいいよ。それに、私と一緒にいたいって言ったよね?」


「た、たしかに言ったけど……」


 それは、毎日つまらないとか、親に小言を言われるのがイヤとか、その程度のことで、異世界で戦いたいとかじゃなかったんだけど。


「じゃあ、私とレアストーンを集める旅に出て、全部終わったら、ここで一緒に暮らそう!」


 ララは床を指差す。


「ここで……?」


 この世界で? お城で? どっち?


「うん。私は、このフェルフォード王国の、王女なの。ここが私の家よ」


「ええーーー!!」


 なんか国王様と仲良さそうだとは思ってたけど、親子!

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