第11話 でもお高いんでしょう?
流砂の国アビル。
世界最大級の砂漠地帯アビルを持つ国であり、面積だけで見れば世界三位の巨大さを
いや、されていた、だな。
今や多くの冒険者を
その原因は、流砂の国の王都コーサーにある最高難易度ダンジョンにある。
低国ヴィネと、世界初となる最高難易度ダンジョン13層への
「噂じゃ、あのソロモンバイブルズの後を追いかけるように、真一級の冒険者パーティーが二つも来たって話だ」
「そりゃすげぇな」
さて、冒険者ギルドでケイブウルフの鑑定を頼んだ
「ちなみに、解散したソロモンバイブルズがどうなったか、とかは知ってるか?」
「あー、そうだなぁ……俺も噂しか知らねぇ口なんだよなぁ……」
言葉を渋る眼帯の冒険者。しかし、その口ぶりとは正反対に、何かを求めるようにちょいちょいと、彼は指を動かしていた。
これ以上の話を聞きたいのなら、金をよこせってことだろう。
「っと、悪いが持ち合わせがないからこれで」
そう言った俺は、懐から一つの石ころを――透き通った青色の水晶を取り出し、眼帯の冒険者に握らせた。
「ふぅん? ……まあいい。運がいいな、兄ちゃん。俺の酒に潰れた脳みそが、ソロモンバイブルズって名前をちょうど思い出したところだ」
しげしげと渡された水晶を見つめた眼帯の冒険者は、まあいいかと、俺からの情報量を受け取ってくれたようだ。
「低国でリーダーを失ったソロモンバイブルズは離散した。まあ実質的な解散だな。残ったメンバーの内、『
よく俺を嘲笑ってたゲルの奴だが、コルウェットと同い年の若者で、俺が突き落とされる一年前に、エルモルトに誘われてふらりと入って来たんだっけか。となれば、ふらりとこの街から出て行ってもおかしくはないな。
コユキは――こっちもこっちで良くわかならないんだよなぁ。昔に、流砂の国アビルに来る道中でパーティーについてきた女の子なんだけど、基本的に無口で一人が好きな奴だった気がする。そもそもが、なんであのパーティーに居たのかがわからなかったが――無口で無言でも、俺が怪我した時も他のメンバーと同じように治療してくれてたこともあって、俺の中では好印象だ。
んで、例の三人組はまだ活動してる……っと。
――あ。
「情報ありがとよ。また会おうぜ」
「おうよ……そうだ、初回利用でサービス付けておいてやる。ここ最近物騒だから、夜道には気を付けろよ。隣の鉄の国もさらに向こうの山の国もやばいって噂だからな」
「どういうことだ?」
「さてな。これに関しちゃ俺もあんまり詳しくないってか、情報が少なくて、変なことが言えねぇんだわ。とりあえず、あんたみたいな顧客のための警告程度に考えてくれりゃいいよ」
「そうか。用心しておく」
「おうおう。生きてこその物種だ。冒険者だからって、命を無駄にすんなよ」
「そうだな」
とある人物を見つけた俺は、眼帯の冒険者に感謝を伝えつつ、席を後にした。人間らしい人間との一年ぶりの会話(コルウェットは……まあいいか)は成功したようで、またあの冒険者から話を聞けそうだ。
やはりこういうコネクションは大切にしていかなければな。マネーライクだって大切な関係性だ。情なんてものに比べれば、わかりやすくて確実だしな。
ふっふっふ……俺だって伊達や酔狂で真一級のパーティーに在籍してたわけじゃないからな。いくら無能と呼ばれようとも、自分出来ることは何でもするのが、足切りにされないコツだぜ。
まずは情報を集めて、安くポーションとか必需品を買えるとこを探して――って、そういや俺、それだけ頑張って足切りされたんだったな。
「……なんで俺落とされたんだろ」
いや、俺を深層に落としなのはコルウェットだから、割と勢いでってこともありえるが……別に、足切りをするのならばギルドで正式にパーティ退促状でも出せばいいものを。
いや、そうか。俺の実家か。
ま、いいや。
どっちにしろ、俺は今死んだ人だ。ヴィヒテンの姓を取り払ったただのルードだ。あいや、ダンジョンの主なのだから、ただの、ではないだろうけど。
あ、まてよ。となると、俺は死んだままの方がいいのか。うん、そうだな。
めんどくせぇ……。
でも、良くしてくれた知り合いに生存報告をしておくことも大切だよなぁ。
そんなことを考えながら、俺はギルドの受付に立つ知り合いへと声をかけた。
「おーい、受け付けってここであってるか?」
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