第38話 終わり始まる場所
もともと
「そういやバラムは心配しなくていいのかよ。あいつ普通に喋ってたけど、俺がコテンパンにしたから相当
「あれでも一応悪魔だからな。落ちてくる瓦礫に押しつぶされたところで大けがにはならないだろう」
「よく俺そんなのに勝ったな……」
改めて悪魔という存在の恐ろしさを知った俺は、それ以上に何で勝てたのかという疑問ばかりが湧き出てくる。
「そうだぞ。主は
「悪魔は人間じゃ勝てないってやつか?」
「いや、肉弾戦じゃ勝てないって話だよ。本来悪魔は
ヴィネの言う通り、〈重傷止まり〉が無かったら、俺は一撃も与えられずに死んでいたのは確かだ。肉体強化とコルウェットの〈花炎姫〉による攻撃力特化の
だからこそ、あいつに勝てたのは奇跡に近い。
ただ、その上でだからこそ――
「だからこそ、よくやったと
「誇っていい……そうか。なんか、すごい違和感がある」
「ハハハッ、まあ違和感だけで十分だ。あれでバラムは
「おい、俺はもう悪魔と戦う気なんてないぞ」
「そうだな。この先の運命が、そうであれと我も願っている」
「……どういうこだ?」
「話はこの先で、だ。ほら、
ただし、会話は長く続かない。
なぜならば、俺たちは街の中央に
ダンジョンボスによって開け放たれた大扉の先には、
「この先が173層だ。そして安心しろ。この先には魔物はいない。というか先の戦いで172層自体が
そういう彼女は、俺の返答を待たずに階段の下へと
それはまるで落ちていくように。
長かったようにも短かったようにも感じられる変わらぬ
そして、その周囲には目がくらんでしまうほどの金銀財宝が散らばっていた。
「なんだここ」
「ダンジョンの最深部。
意味ありげに語るヴィネは、ここなら大丈夫だと、近場の
「さて、ダンジョンの
「それはいいけどよ、
172層で、そして俺によってダンジョンボスが討伐されてしまったせいで、このダンジョンに脱出口が現れることなくダンジョンの崩壊が始まってしまった。
それを止める手立てがヴィネにはあるらしいが、いったいどうやって?
「主が新たなダンジョンボスになるのだよ」
「はあ?」
あまりにも
「あー……なんか変な想像をしているところ悪いが、別にダンジョンボスになったからと言って、姿かたちが変わるわけではないぞ」
「そうなのか?」
「そうだな。これは我の言い方が悪かった。つまるところ、主がダンジョンの主となることで、ダンジョンボスという支えを失ったダンジョンを誤認させるんだ。まだダンジョンは攻略されていない、とな」
「それで止まるんだな?」
「ああ、我のお
そういう彼女は――初めて、俺の前で仮面を外した。
彼女の
美しい、と俺は思った。
「改めて。
語られるのは、彼女の身分なのだろうか。そういえば、バラムが知略の悪魔と言っていたな。あいつには似合わないが、確かに未来を見通せるのなら、そう言われて当然だ。
そして、ヴィネは百智という
「
「それで崩壊が止まるなら」
「百智の
「わかったよ」
差し出されたヴィネの手を俺は取った。
「
「ずいぶんなことを言ってくれるなヴィネ。これはからはお嫁様って呼んだ方がいいか?」
「それならば我は主を旦那様とでも呼ぼうか?」
「うっ……じょ、
長いまつ毛の可愛らしくも美しい瞳に見られながらそんなことを言われてしまえば、どんな男もころりと惚れてしまうこと間違いなし。さすがの俺も、思わずたじろいでしまう。
「それじゃあ旦那様」
「それ続くのかよ」
「似たようなものだからな。これから
「あーあー、もう好きにしていいよ。ただ一つ言っておけば、俺は誰かに愛されたことなんてないから
「
「どういうことだよ、それ」
冗談まじりな彼女の言葉に、フッと笑った。
「ほれほれ、さっさと誓うのだ。もうすぐダンジョンが完全に崩壊してしまうぞ」
「わかったわかった。――俺は誓うよ。このダンジョンの主になる。このダンジョンの、王になる」
「ならば我も誓おうぞ。この者を新たなる王として、このダンジョンに相応しき実力者として、空いた玉座に収めよう」
恐ろしいほどの魔力がうねりを上げて、玉座へと
そして俺は――
『スキル条件が達成されました。スキル〈玉座支配〉が解放されました』
『スキル条件が達成されました。ジョブ「
「……え?」
俺は、流れ込んできたアナウンスに頭を抱えた。
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