第34話 花騎士
圧倒的な実力を
ここにはコルウェットがいる。意識がないあいつを、戦いに巻き込んじゃいけない。そんなことを思って焦っていた。
ただ、現実は
「コルウェット!!」
彼女の背中に、炎にも
「くそっ! なにしやがる!!」
「おおっと、怖い怖い。いやだってさ、コルちんをここに連れてきたのは私なんだから、その
「おい! コルウェット! 聞こえるか!」
ごふと血の
なぜならその左胸に、あからさまな大穴が開いていたから。心臓と肺を巻き込んで、今どうやって呼吸をしているのかが不思議なぐらいの傷を彼女は負っていたから。
「待ってろ、いま団子を――ああくそっ! 服に入れたままだったから持ってねぇ!!」
間に合うかなんてわからない薬効団子を使おうとして、俺はそれを水辺に置いてきた上着のポケットにしまっていたことを思い出した。
あそこまで走って取ってくる間に、彼女の命は
だから、だから――
「ねぇ、ルード」
「なんだよ、コルウェット」
初めて、俺は彼女に名前を呼ばれた気がした。
だから、俺も名前を呼び返した。
「ありがとう」
俺が彼女の名を呼んだあと、彼女の
そして、そして――
「コルウェット? おい……おい!!
その
『スキル条件が達成されました』
うるさい。
『スキル〈王の器〉が解放されました』
うるさい。
『スキル条件が達成されました』
うるさいんだよ。
『ジョブ『■■■■■■』の情報が更新されます』
うるせぇっつってんだろ!!
『空白の玉座はすぐそこです』
何が言いたいんだ!
『スキル〈王の器〉の条件を達成しました。対象名『コルウェット・ムジナ』よりスキル〈花炎姫〉を徴収します』
――は?
『どうか、頑張ってください。まだ、諦めてはいけません』
何時かに聞いたスキルアナウンス。
意味不明な言葉が
ただ、一つだけ言えることがある。
「……なにかな、それは。今時、お姫様の死によって
「ハッ、知るかよそんなこと。……だが、お前は自分のやったことのつけを払うんだな」
俺の周囲に花が咲く。
花に包まれながらそっとコルウェットの
俺には姫様なんてのは似合わない。だから、俺は
守ってもらうためにじゃない。俺自身が、守るために――できることならば――
「せめてお前が、生きていてくれればな――『|花騎士〈フラワーナイト〉』」
咲き乱れる炎が俺の体にまとわりつく。しかし、その炎は決して俺を焼き
「歯、食いしばれよバラム」
――一つだけ、困惑の中にいる俺にもわかることがある。
それは、この力がコルウェットのくれたものだとするならば、俺はこいつを倒さなきゃいけないってことだ。
俺の拳が、バラムめがけて振るわれた。
『スキル〈重傷止まり〉が発動しました』
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