第33話 恩返し
「……あれ、私……生きてる?」
体を上げる。
「ここ……は……門の前?」
あたりを見回す。
「ああ……確か、あの時――私は、あいつに助けられたんだ」
ここまで来て、私はやっと今自分が置かれている状況を思い出した。
知らずともわかるほどのダンジョンボスとしての
だけど、ソレは訪れることなく、一人の男に助けられる。
ルード・ヴィヒテン。
私がゴミと、無能と
「…………………………」
おい私。何を考えている。
相手はあの男だぞ? あの、世界有数の冒険パーティーに所属していながら、まともに戦うこともできないくせにダンジョンについてきて、足を引っ張っていたあの男だぞ?
ああ、なのに――なんで――
「かっこよかったぁ……!」
なんで、あんなにかっこいいのよ!!
三日前もそうだった。私が
わ、私みたいな恋愛経験ゼロゼロな子を落とすために、狙ってやってるんじゃないのほんと!
ああもう、地上で貰ったラブレターなんかよりもキュンキュン来ちゃう! 来ちゃってるぅううう!!
「……そういえば」
のぼせかけていた
「はぁあああああ!!!!」
ルードを前にしてあんなに
「って、そんなことしてる場合じゃなぁい!!」
そんな感情も無理やり
あの時、私の前に現れた獅子面の魔物はどうなったのだろうか。
あれほどの巨体と戦うとなれば、周囲への
「……体に痛みがない」
「
思い浮かべたのは、三日前に私の体を治した薬効団子なる薬。少し苦みが強くて、
だからこそ、私はルードに感謝をしつつ――感謝をしつつ?
「……いやね、もうあの男のことを嫌いなんて言えないじゃない」
私はいままであの男を敵として扱ってきたが、そんなことを忘れて私はルードに感謝を伝えようなんて思っていた。
もう、私の中でルードは、そんなにも気さくに感謝を伝えるような相手ということになっているらしい。
「まったく……」
その言葉は、ルードに対してか、それとも助けられただけでころッと落ちてしまった私に対してのモノのなのか。
どちらにせよ、私自身にすら
その時だった――
「がぁ……!!」
私の元へと高速で飛来してきた人型の
「ルード!?」
「コルウェットか……よかった、起きたんだな。だが状況は全くよくない。早くここから逃げてくれ。あの獅子面よりも、よっぽどやばい奴が近づいてきてるから……!」
そういうルードは、ボロボロの体を
ルードの実力がどれほどなのかを私は知らないけど、そんなルードが一方的にやられてる。そんな状況に私は一人戦慄していた。
その上で、彼の言葉に驚いた。私じゃ手も足も出ないどころだった獅子面よりもやばいって……
「来たか」
「……え?」
遠くを見つめるルードの言葉に誘われて、私もそちらを見てしまう。
そこに居たのは――
「あれーなんかいる。あ、そういえばいたっけね、君」
そこに居たのは、私をここに突き落としたあの補給員の女だった。
「え、どうして……あんたがここに……」
「
「……まさか、私を操って、あなたがこんなことをさせたの?」
「違う違う! 街の中央に行ったのはコルちんの
「おい、気を付けろよコルウェット。あいつは未来を見る。だから――」
あの女を前にして私は怒りを覚えていた。
ルードに
いや、というよりも――あんなに軽々と語る彼女に、私は利用されて、死にかけたのかという
だから、だから――
「ルード、私も戦うわ! できることは少ないけど、あんたが助けてくれたみたいに、私も――」
「あっそ、なら死んじゃっていいよコルちん」
「――っ!?」
戦うと、助けられた
「嘘、でしょ……?」
女が、私の胸を貫いていることに気づいた。
「コルウェット!!」
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