第26話 異変炸裂
その異変に気付いたのは、魔力特訓中のことだった。
「……相変わらず微動だにしねぇな、この人形」
『体で覚えよう魔法君』なるこの人形だが、魔物を相手にある程度戦えるほどには、魔力を使った肉体強化ができるようになったのだが、だからと言ってこの人形を簡単に動かせるわけではないらしい。
俺の足の一撃は、あのゴブリン
ただし、ただ力で押すだけではダメ。魔力を使った肉体強化を行いながら、その上で足に魔法を
「メモでも読み返すか……」
そうして特訓の
『肉体強化のコツは、魔力が体全体を
魔力を肉体を
どうやら基礎訓練中に、俺は無意識でこれを身に着けていたらしい。まあ、肉体強化の訓練は、ソロモンバイブルズの時からある程度はしていた
どうしてここでその力が
ダンジョンの核が放つ
おそらくはそういう
難易度の高いダンジョンで鍛錬するほどに、強力な力が手に入る、と。そしてここは172層。それも、世界有数の最高難易度の巨大ダンジョンの深層である。
しかも俺は、人間の
まあ、結果俺が強くなれるのならば問題ないな。
ただ……この力が、悪い方へと転ばないことを祈るしかない。
さてさて、
俺にとっていま大事なのは、肉体強化ではなく魔法だ。
どうにも俺は魔法がとても苦手なようで、はっきり言って成功の兆しが見えない。
しかも、意識的に肉体強化を行いながらとなると、それなりの集中力が必要だ。そもそも魔法の使えない俺には無理難題が過ぎる。
それでも、ヴィネが俺にできると言ってくれるのならば、俺はその期待に応えるまでだ。
さてと。改めて、俺は魔法のコツを確認する。
「魔法のコツは――」
その時だった。
―AAAAAAAAAAAAAAAA!!!!
聞こえてきたのは、耳を
「なっ……ッんだよこの音!!」
思わず耳を
なぜならば、あの方向は――
「街の中央だ」
魔法の訓練のおかげで感知できるようになってきた魔力が
明らかな異常事態。少なくとも、この半年間に一度も起きたことのない異変に、俺は言葉を失った。
それから
『あ、街の中央には近づくなよ!』
おせっかいを焼きすぎるあまりに、飛び出てしまった余計な一言を俺は悔やんだ。
確かにあいつは俺と同じだけど、あいつは俺に対して
「ああ、くそ……! あいつのことは気に入らねぇが……なにも、死んでいい人間なわけねぇんだよ!!」
この世界には、どうしようもない悪党は存在する。俺はそのことをよく知っている。だからこそ、あの女の子は違うと声を大にして言うことができる。
コルウェットが、死んでいい人間じゃないことも、だ。
だから、俺は走った。自らが撒いた種を拾うために。
間に合えと、ちょうど三日前に願ったように、俺は再び願うのだった。
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