第20話 堕ちる
低国ヴィネの13層から見下ろすことができるその
崖際に座ってその景色を
「なによ、エルモルトの奴。私だって頑張ったってのに、あの言い草は! あんな雑魚どもが何人死んだって、私には関係ないってのに……全部、自分の身も守れないやつが悪いのに!」
13層へとたどり着いた彼女だが、その道中で補給員の一人に大けがを負わせてしまったのだ。もちろん、彼女が意識してけがを負わせたわけじゃない。
どういうわけか偶然にも、彼女の炎魔法の防御を突破して補給部隊に襲い掛かった魔物が居て、そいつが補給員の一人の足を食いちぎったのである。
そして、それはそのまま彼女の失態となった。今しがた、エルモルトからお叱りの言葉を受けてきたところであり、言い返せない彼女は
「なんで……あんな何の努力もせずに、誰かについて回ることしかできない奴が優遇されるのよ。私だって……私だって頑張ってるのに!!」
1層から13層の道のりを
扱いの難しい炎魔法の使い手として、大した被害も出さずにそれをこすのは、流石は真一級の冒険者といったところか。
「コルウェットさん」
「……だれよ」
そんな彼女の元に、一人の女が現れた。猫のひげのような一本線を四つ頬に付けた、特徴的な釣り目の女だ。そして、彼女は確か――補給員の一人であったはず。
「
「なによ、文句でも言いに来たの?」
「いえいえ、そんな訳ございません。他の誰はそう思っているのかもしれませんが、私は全く別のことを考えてここまで来たのです。そう、お礼を言いに来たのですよ」
「お礼?」
お礼を言いに来た。そういう女の言葉につられて、彼女はふんと息を吐いた。
「私は補給員一人も守れない無能よ。お礼なんて言われる筋合いはないわ」
「いえいえ、ここまでの道のりをあなた一人で来たのですよ? ほかの班は二人の人員が割かれていたとはいえ、我らが第三班はコルウェット様たった一人で、全員が生きて13層までたどり着くことができたのです」
「そ、そう?」
女の言葉に、コルウェットの耳がピクリと反応した。
「ええ、そうです。だから私は感謝しに来たのですよ。ありがとうございます。ここまで私たちを連れてきてくれて」
にこりと笑みを浮かべながら近づく彼女に警戒をしながらも、コルウェットの口元はまんざらでもなく嬉しそうに形を歪めていた。
「後にも先にもこれほどのことができる冒険者は現れることは無いでしょう。だからこそ、一目あなたの顔を見て、お礼を告げておきたかったのです。未来のダンジョン攻略者となるであろう、あなたの顔を」
「ふふんっ、いい目をしてるじゃないあんた。
女に
だから、彼女は気分よさそうに声を上げて――
「それじゃ、頑張ってね~」
トンッと、崖の下へと突き落とされた。
「……え?」
空中に投げ出された体は重力の
落ちる、落ちる、落ちる、落ちる。
低国ヴィネの絶景を眺めて気を紛らわせていた彼女は、今まさにその絶景へと飛び込んでいった。
『
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