第19話 奥深くへ
低国ヴィネ。
世界に九つある高難易度ダンジョンの一つであり、最終
13層からガラリと変わる難易度もさることながら、13層にたどり着いて初めて見ることのできる低国ヴィネの
「作戦はこうだ。13層の
そんなダンジョンに挑むパーティが居た。そんなダンジョンに挑む人間たちが居た。
「さて、『低国ヴィネ』攻略第二陣と行こうか」
ソロモンバイブルズのパーティーオーナーであるエルモルトはそう言って、二回目となるヴィネの深部を目指す作戦の始まりを
◆◇
さて、ここは低国ヴィネが
ただ、この少女にはそんなことは関係なかったらしい。
「燃えろ燃えろ! ハハハハハ!!」
『
それはつまり、彼女が世界
「やめてくださいコルウェット様! それほどまでに強力な殲滅魔法を使っては、こちらにも被害が出てしまいます!」
人格の方は、少々問題があったようだ。
「……ッチ…うるさいわね! 死にたいの!?」
「し、死にたくなんかございません! しかし、広いとはいえ
「あーあー! わかったわよ! 私の仕事は、一人じゃダンジョンにも潜れないお荷物を抱えて下に行くことよ! これでいいわね!」
冒険者の補給部隊と言い争うコルウェットだが、このように声を
(まったく、守ってもらってる分際でギャーギャーうるさいわね! 自分の身も守れないような雑魚が!! 誰かの後ろを付いて回ることしかできないひっつきむしの分際で、私に指図するなんて……!!)
口に出せばリーダーから怒られる手前、彼女は心に浮かべた文句を口にしない。しかし、意識せずとも態度にはわかりやすく表れていて、襲い掛かって来た魔物を
彼女の得意技の炎魔法が魔物を焼き、その
むしろ、全身炎に巻かれて焼けてしまえとすら思っている。
なぜならば――
「なんと横暴な女なのでしょうか」
「あれでも真一級の冒険者。我々が敵うような相手ではありません。班長が焼け死んでいないだけ、まだましと考えるべきでしょう」
「しかし……」
「しっ、口を
「そうですね。性格はアレですが、見た目と実力は確かなモノ。ここに
後方でひそひそと言葉を交わす補給員たちの言葉を、彼女はしっかりと聞いていたから。
恐れと
だからコルウェットは、後ろを見て
(……あら? 一、二、三……九? 確か、私が受け持つのって八人じゃなかったかしら? いえ、そんなことどうでもいいか。一人減ろうが一人増えようが、私には関係のない話だわ。あーあ、早く13層につかないかしら)
もし、ここで彼女がその存在に気づいていれば、違う未来が
しかし、それも自分が守るべき補給員は九人であったと、コルウェットが
「ねぇねぇ」
「どうしましたか? バラムさん」
「あの女さ……殺さない? 祈るなんて
「そ、それは……!」
「そんなこと許されるはずがないでしょう!」
「でもさでもさ、ここはダンジョンだよ? それも、とびっきり難易度が高い。だったらさ、超一流だろうが人一人が死んでいなくなっても、大した問題にはならないって」
「た、確かに……」
未来を見る悪魔には、すべてがわかっていた。
コルウェットが自分のことを気にしないことも、補給員たちがコルウェットを
彼女の運命の行きつく先が、どのような結末を導くかすらも、彼女は初めからわかっていた。
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