【最終話】━━ どんな時でも。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「では、神様。準備はいいですね?」
と神様に声をかける。私には既に分かっている。元邪神が昇華してしまった今、こうなることは決まっている。
「ああ、わかっておる」
と、神様もわかっているかのように返事をした。
「主? ユー? なにを?」
ただ天使ちゃんは不安そうに私と神様を交互に見詰めていた。
「つまり、我とユーと主で封印されると言うことだな? ふーいん!」
天使長様はもうただ封印されたいだけの頭のおかしい人なんじゃないか?
一瞬でもときめいた自分が馬鹿だった。まあ、顔はいいしな。
「説明しよう。ワシと邪神は一心同体。元は一つの神であったのじゃが、長い永劫の時の中二つに分かれ、ワシは群を選び、あやつを個を選び……」
「長いっ!!」
そう言って、神様をびんたする。
もちろん、七転罰登掌だ。
「そうして別れた我々はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
神様もそうして昇華していった。
「主? 主よ!? ユー、な、なにを!?」
天使ちゃんが狼狽してあたふたしている。
狼狽する天使ちゃんを少しの間見て愛でていたかったけれど、かわいそうなので説明してあげる。
「こうしなくちゃいけなかったのよ。元邪神が昇華した今、神様も昇華させてあげないと世界が崩壊してしまうの。多分……」
「多分……?」
と、天使ちゃんが聞き返してくる。
「確かそんなような話だったはずよ。ちゃんと聞いてなくて聞き流していたから、あれだけど」
だって話長いのよ、あの神様。興味ないことを永遠と話しやがって。
「え? そんな大事な話を聞き流していたんですか?」
「でも、ほら、神様もそのつもりだったでしょう?」
「そ、それは確かに……」
「つまり封印だな? 封印!封印!我と封印!!」
え、天使長、本当にどうかしちゃった? まあ、触れないでおこっと……
「そういうことなのよ」
そう、そういうことなの。私にもよくわからないけど、そういうことなのよ、天使ちゃん。これからは私だけに尽くして私だけを愛でてね。
「けど、主がいなくなったらその御使いである私たちの存在意義が……」
「安心して、今から私が天使の主だから!」
そう、今この時から私が神様になったのよ。
「ユーが!?」
「なに!? そうなると封印の大義名分が……」
大義名分とか言い出したぞ、こいつ。
「そうよ。もうこの世界に神の力を持つ者は私しかいないもの。この世界は私の物っていう事ね」
「そ、そんなことが!?」
「でも安心して天使ちゃん。私はこの世界を平和に導くから!」
「えぇ…… ユーにできるんですか、そんなこと?」
なんか天使ちゃんからひどい疑いの目を向けられているんだけど?
いや、今の私にできないことのほうが少ないからね?
神をさらに昇華させるだなんて、普通出来ないことだからね?
「できるんじゃない、やるのよ!! それがきっと、多分だけれども、神様の遺言だから……」
遺言何て聞いてないけど、きっとそうよ。そういう運命だったのよ!
「いや、主なんか説明の途中で昇華されていきましたよね?」
冷静に突っ込んでくるな、天使ちゃんめ。
「だって、神様の話長いし? まあ、そんなわけだから今から私が天使たちの主よ! ユー様って呼びなさい!! あっ、天使ちゃんだけは呼び捨てでいいからね」
「そ、そんな、ユー?」
うんうん、やっぱり私の天使ちゃんには呼び捨てにされたい。
「あ、この世界って人間もちゃんといるのよね?」
「も、もちろんですよ、地上で暮らしています」
なんだかんだでこんな状況でも天使ちゃんは私の問いに答えてくれるから好きよ。
「まずは人間達に幸運をばらまきなさい!」
与えて与えて与えつくすの。求める者にはすべて与えつくすの! それこそが真の幸福。
「そ、そんなこと、幸運には本来、元々の量が決まっていて……」
「大丈夫よ、大きな神が二人も昇華して幸運バラマキ機になったんだから、この世界は今や未来永劫幸運に包まれた世界なの。何の心配もいらないわよ。すべて上手くいく。そんな世界になったの!」
そう、あの二人の神はこの世界に幸運をもたらすそんな存在になった。何も心配はいらない。明るい未来は約束されたようなものなのよ。
「つまり封印も自由自在で幸運という訳か!?」
もう触れないでおこう。
「そ、そんなことが!? けど確かに、この明るくも暖かい気が世界全体に満ちています…… それは私でも感じれてます」
「でしょう? だから、天使ちゃんはこれからもずっと、どんな時でも、私の世話をし続けてね。それでこの世はすべてうまく回るんだから!!」
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