【第四話】━━ そのままじゃないか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
朝日が上がる切るまで天使ちゃんとコミュニケーションを取り続けた結果、私に戦闘の意思がないことだけは伝えることができた。
「し、信じられないが邪神が改心したとでもいのか?」
その言葉に私は指を一本だけ立てる。
場合によりそうかもしれないけど、まあ、私自体が改心したわけじゃないからね。
「改心した訳ではない? どういうことだ? とりあえず今までの邪神と違うということは理解できた。何かが起きたんだな?」
即座に指を二本立てる。
そうそう起きたんだよ。中の人が違うんだよ。でも、そんなことどうやって伝えればいいのさ?
「我らが主であれば、もっと意思疎通できるはずだが……」
そこで少し考える。
主。天使の主。おそらく神様ってことだよね?
それに会えば意思疎通ができる?
そもそも私はどうしたいんだ?
地球の世界で蘇らせてもらう? うーん? 向こうの世界で生き返ったところでぶっちゃけ詰んでるよね?
天涯孤独のようなもんだし、希望も夢もない。
じゃあ、こっちの世界で生きていく? 邪神として?
いやいやいや、不便でしかないよ。この体。
触るものみなを傷つけるを体現してる体だよ?
とりあえず、その神様にどうにかしてもらうってのはありなのかもしれない?
その際、邪神の力を捨てちゃえば、多少は融通してはもらえるよね?
それに賭けるかー、それしかないのかな?
そうだよね、それが現実的だ。つまりは、我に降伏の意思あり! ってことだよね。じゃあ、ここは二本指を立てよう。
「邪神も我らが主に会うというのか? 一体何がどうなっている…… まるで人が変わったようにな変化じゃないか」
天使ちゃんがそう言ったので、慌てて再度二本指を立てた。
「むっ、ここで二本指か…… 人が変わった? 中身が変わった? 邪神の?」
更に二本指を強調する。
えらいぞ、よくぞ、その回答にたどり着いた! 天使ちゃん!! さすが私の天使ちゃんだ!!
「そう言えば、自ら武器を手放していたな…… わかった。私から主に祈りをささげてみよう」
そう言って、天使ちゃんは私の掌の上で祈り始めた。
何もしてなくとも輝いていたが、その輝きが増していく。
しばらくすると元の輝きに落ち着く。
「主もお会いになるそうだ。私についてこい。案内する」
そう言って天使ちゃんは私の手から飛び立った。
今度はそれを邪魔せずに、ゆっくりと天使ちゃんに先導されてついていく。
そのうち光る羽虫たち、い、いや、天使たちが整列して空中に道を作っているようになる。
まあ、誘導しているというよりは警戒していつでも攻撃できるように、って感じなんだけど。
だって拡大してみると、みんな針というか槍? を私に向けて凄い顔してるし。でもみんな美形なのね。その点はなんかうれしい。
そうやってしばらく進むと、空に浮かんでいる光り輝く城についた。
そこで天使ちゃんが止まったので私も止まる。
ただでさえまぶしい光る城から、さらにまぶしい光る人が現れる。
普通の人間よりは大きいが、この邪神の体程バカでかいということはない。ただ後光が眩しくてその姿をちゃんと見ることはできない。
「ふむ、信じられないが本当に中身が違うようだ」
そうだよ、違うんだよ! わかってくれた、流石神様!!
とにかくこのばかでっかい体をどうにかしてくれませんか!
大人しくしてるんで!
と、必死に心の中で訴える。
「なんと、降伏すると申すのか?」
はいはい、助けてくれるなら降伏だってなんだってするよ!
「大人しく封印されてくれるか?」
封印? あれ? そうすると私はどうなるんです?
「何もない闇の空間に投げ出され、やがては混沌の海へと落ち、長い年月の後、すべては飲み込まれ無に変えるであろう」
それは流石に嫌なんだけど?
えーと、どうにか私だけでも助けてもらえませんか? この体はどうなってもいいので。
「難しいことを言う。いや、しかし、ここまで協力的であれば…… この地でもその体を解体することも可能ではある」
解体? その場合は私はどうなるんです? 神様!?
私痛いのは嫌だし、死ぬのも嫌よ? 神様?
「邪神に肉の一欠から新しい体を作ってやることはできる。それで人と生きていくことはできよう」
そ、それで!! その案でお願いします神様!!
「まさか、こんなことで数億年と続けたきた戦いに決着がつくとはな。本当に良いのか? 人になるというのか?」
よくわからないけどいいです!
あと、できれば贅沢は言いませんので衣食住を補償してください!!
「いいだろう。では、まずそなたをその邪神の体から離隔するところから始めようか」
「で、これが新しい私の体?」
やっと喋れる。邪神の体喋れないと思ったら口がないのよね。外から見てやっとわかったよ。
今の私は普通の人サイズ。いや、結構な美人さんに作ってもらえたのかな。鏡を見る限り自分でもうっとり見とれるくらいには美人だ。
ただ何ていうか、あの元邪神ギャルにそこはかとなく似ている。ただ私のほうはギャルじゃなくて清楚系だけど。
「まさか本当に邪神の中身が違う者になっていようだなんてことがあるとはな」
天使ちゃんがそう言って驚いた顔をしながら私を見ている。
まあ、そうだよね。
ついでに天使ちゃんは、しばらく私の監視役になるそうだ。
「どう、天使ちゃん。私、綺麗でしょう?」
そう言ってその場でかわいらしくクルリと一回転して見せた。
その余波で竜巻が起きた。
体は人間大になったけど、邪神の力は失われていないようだった。
私が一回転して見せた余波で出た竜巻は、光る城の一室を完全に吹き飛ばし、壁を、天井を、床までも、天空に巻き上げていった。
おい、まじかよ。邪神の力そのままじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます