第十一章

海岸。そこが僕の戦いの場になった。

水龍に共鳴するように荒れ狂う海にたじろぎながらも覚悟を決める。


「あれを倒せば終わりだ。大丈夫、僕ならできる。」

そう、自分に言い聞かせ、水龍に向き合う。


海上で戦うのでは明らかにこちら側が不利だ。

ハヤテの力を借りて空を飛び、疑似的に空vs陸の構図を作り出す。


これなら、条件の差を少し埋められるはず。


「いくよ、ハヤテ!」

そう呼びかけると、ハヤテは力強く頷いた。


こうして、僕と水龍との戦いが始まった。


最初は水龍の力量が図れず、防戦一方だった。

水壁でブレスを防いだり、海を使った衝撃波をハヤテの風と合わせて押し返したり。

防いでいるとはいっても確実に削られている、そんなかなりぎりぎりの勝負を展開していた。


だが、戦っているうちに、あの時の感覚が戻ってきた。

ホムラとの戦闘でも経験した、あの全能感。


すると攻撃の後隙や、溜めの動作を読めるようになり、少しずつだが攻撃を加えられるようになった。


最初は一撃。また一撃と小さな攻撃を重ねていたが、隙を見て水の弾幕で波状攻撃を仕掛けたり、ハヤテと呼吸を揃え、合わせ技をぶつけたり。水龍の体力を着実に削っていった。


「スイ!いける!勝てるよ!」

そう叫ぶハヤテに笑みを返しながら、さらに攻撃を重ねる。


そして水龍が咆哮を上げた瞬間、

「今!」

ハヤテの掛け声に合わせ、僕は即座に水の刀を創り出し、霞に構えた。


一拍。

息を吸い、水龍の首元に向かって切りかかる。


あと数寸で刃が届く。その瞬間。


僕を頭痛が襲った。


頭が割れるような、そんな痛み。

そしてそれと同時に、少女の叫び声が脳内を駆け巡った。


僕は思わず空中に膝を付ける形で、手に持っていた刀を取りこぼしてしまった。


「どうしたの!? スイ!?」

遠くにハヤテの声が聞こえる。


不味い、体勢を立て直さなきゃ。

何とか水龍から距離を取ろうと立ち上がった。


だが、遅かった。


面前には竜の鱗が広がっていて-


僕は後方に吹っ飛ばされ、そのまま気を失った。

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