第九章

「ここが...封印の祠...」


森を抜け、大樹の麓。

巨大すぎるほどの樹の根によって作られた部屋の中に僕らはたどり着いた。


遂に、ここまで辿り着いた。

日にちこそ大して経ってはいないが、かなり遠くまで進んできた気がする。


「えー!すごいきれいだね!!」

「これは圧巻ね...」

ホムラとハヤテが辺りを見回しながらつぶやく。


「僕も初めてきたけど、こんな壮観な場所だったとはね...すごいや....」

ダイチも目を輝かせながら言葉をこぼす。


みんなの反応も無理はないだろう。

実際、僕もかなり圧倒されている。


まさか、大樹の中に白銀に輝く部屋が形成されていたなんて。


多分、初代の使い手たちの時代からある遺跡なんだと思う。

よく読めないけど、石盤に古代言語みたいな文字が刻まれている。


読めたらきっと色々わかるんだろうけど、生憎読めないので今はスルーしておく。


おじいちゃんなら古代言語知ってるのかな。そんなことをうっすら思いながら

遺跡の中央部に歩みを進める。


「ねぇ、あれじゃない?」

遠くの小高い部分を指さしながら、ハヤテが声をかけてくる。


明らかに作られた、謎の小高い床。

何かがあるようなら、多分そこだろう。


僕らはその場所に駆け寄り、床の上に立った。


中央部には台座が建てられており、その上に割れかけた白銀の宝玉が収められていた。


「これが...封印の正体...」

伝承書のほうにも記載があった、初代使い手たちが自然の怒りを鎮めた証。


そして使い手の血を引く者たちが3000年つないできた平穏の証。


「よし、僕らも始めよう。封印の任を。」

4人で台座を囲うようにして、僕らは宝玉に正対した。


確か僕らの属性の力を宝玉に吸収させることで効力を復活させる、そのはずだ。


念のためホムラに問いかけると

「ええ、間違いないわ。」

と、自信満々な返事が返ってきた。


彼女の言うことだから、本当に間違いはないんだろう。



「じゃあ、始めようか。」

目を閉じ、三拍くらい深呼吸をする。


大丈夫、僕ならできる。僕たちになら成せる。


そう、心の中で唱え、台座に向かって両手の手のひらを向けた。


「未来を照らす炎の力よ。」

「世界を潤す水の力よ。」

「季節を彩りし風の力よ。」

「大地に恵みをもたらす土の力よ。」


「その力を以てして、再び悠久の封印を成さん。」


各々、詔を唱えながら力を宝玉に注ぎ込んだ。


すると、宝玉はまばゆい輝きを放ち...



急速に光を失い、朽ち果てて砂へ変わってしまった。



「え...?」

全員、声をそろえてつぶやく。


なんで、どうして。

儀式は完壁だったはず。

なのになぜ宝玉が。


刹那、地面が揺れた。

いつもの地震よりも、もっとずっしりとしていて、おどろおどろしい雰囲気の揺れ。



「...まさか」

皆に目を向けると、まるで自分の考えが伝わっているかのようにうなずきを返してきた。


あの宝玉は、過去に暴れまわった化身を抑えるためのもの。

その言わば制御装置ともいえる宝玉が消えてしまった今、


奴らが、化身が復活する。


僕らは全速力で祠から脱出し、ハヤテの風で空へと舞い上がった。


「なっ...」

外の景色を見て、僕は絶句した。


そこに広がっていたのは、4体の龍が暴れまわる、天変地異とでもいうべき世界だった。

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