第五章

「どうーー?気持ちいいでしょ!」

ハヤテが風の中、得意げに話しかけてくる


僕らは、風の中を飛び回っている。

これも、ハヤテの「風使い」としての能力のひとつ。

僕には扱えもしない能力。

水使いも便利だけど 風使いも中々快適そうだ。


「うん、凄いね、コレ。自由に動けるし、便利だ」

「あはは~私から離れすぎると力が届かなくなっちゃうから、あんま遠くに行かれちゃうと困るんだけどね~」

ハヤテがおどけたように言葉を発する。

結構長く飛んでいるのにハヤテに疲れの色すら見えない。

僕は静かに感嘆しながら、二の句を継いだ。


「それで...どっちの使い手のところに向かおうか。」

伝承通りなら僕ら以外に2属性、火と土の使い手がいるはずだ。


「うーーーん、此処からなら多分火使いのところのほうが近そうな気がする...」

地平線に目を凝らしながら、ハヤテが教えてくれる。


火使い。

勇猛果敢で熱血。火の名に恥じない強そうなインパクトを持った使い手たちだと

おじいちゃんが昔言っていた。

一度もあったことがないが、元気な人たちなんだろうと想像がつく。


「なら行ってみようか、火使いのところに。」

僕がそういうと、ハヤテはピースを僕のほうに向け、


「おっけ~!置いてかれないようについてきてね!」

といい、加速した。


僕も置いて行かれないようにハヤテの後に続いた。




「はぁ、はぁ...ハヤテ...飛ばしすぎだって...」

息も絶え絶えに、ハヤテに抗議する。

何とか追いつけたものの、早すぎて息もできなかった。


「ごめんごめ~ん、いつものノリで飛んじゃった」

...この速さがいつものなのか。

途中で鳥が飛んでいたが、慌てて避けていくくらいには早いのに...

僕はちょっと戦慄しながら、辺りを見渡した。


「それで...ここに火使いがいるの?」

後ろに火山がそびえたつ、山の麓。

いかにもって感じの場所だ。


「そうだよ~確かこの辺に家があったと思うんだけど~...」


「その火使いが私だって言ったら、どうする?」

不意に、後ろから声を掛けられる。

振り向くと、そこには少女がいた。道着のような..装束?を纏った少し小柄な女の子。

だけどその子は、ハヤテみたいに強いオーラを纏っていた。


「本当にキミが火使いなの?」

確認するように、ハヤテが聞き返す。


「そーよ。今代の火使い、ホムラよ。よろしく。」

「ボクはスイ。水使いの末裔だ。こっちは風使いのスイ」

「よろしく~!」


早々に自己紹介を済ませ、僕らは本題を切り出した。


「ねぇホムラ、封印の任の話は知ってる?」

「知ってるわよ。だってそのためにアンタたちを待ってたんだもの。」

やはり使い手ならばみんな知っているようだ。


「それなら話が早い。僕らは今、仲間集めをしているんだ。協力してくれないかな?」

「もちろんいいわよ。」

さっきのやり取りで予想はできていたものの、すんなり事が進んで若干拍子抜けする。


ハヤテと二人で呆気にとられていると、ホムラがビシッと僕のほうに指をさしてきた。


「ただしスイ。あなたは私と決闘してもらうわ。」



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