第4話
まさかK4の黒崎カイ先輩が一人でランチルームに来て、全く関わりのなさそうなっていうか、知り合いでも何でもない私に話しかけてくるなんて。なんだかまだいい匂いが残っているんだけど、もみじちゃんとレオンちゃんはちょっと心配そうにしていた。
「ねぇ、くるみちゃん。黒崎カイ先輩と知り合いだったの?」
「まさか! 今のが初めての会話」
「初対面で会議室に……って、くるみちゃん何か先輩を怒らせるようなことした?」
「え……何もしてないけど?」
黒崎カイ先輩、怒ってたの? いつもクールだって言われていて、表情をあまり変えることのない先輩だから怒っているように見えたのかな? 私にはそうは思えなかったけど……っていうか、私、先輩を怒らせるようなこと、した?
「小岩井、さっき先輩の前でカバンの中身ぶちまけただろ。そんときに回復薬とかがこぼれて、先輩の足にかかったとかじゃねぇの?」
食事を終えた岡くんが、私たちのところにやって来てそう言った。いや、そんなはずはないよ。回復薬は瓶に入っていてこぼれた跡はなかったもん。しかも、それくらいで呼び出して怒るとかありえないでしょ! じゃあ何で先輩は私に対して怒っているんだろう――目の前でカバンの中身をぶちまけちゃうくらい、鈍臭いから――かな?
「小岩井くるみ……お前みたいなチームの足手纏いになるような人間はこの学園には必要ない。どうして俺たちK4が自分の授業を放り出して一年生のお世話をしなくちゃいけないんだ!」
ああ、会議室で私が言われるセリフが思い浮かんできた……。こりゃだめだ。なんか噂ではK4は学校の運営とかにまで手を出しているとか聞いたこともあるし。
「そうよ、小岩井くるみ……あなたのような生徒がいると可愛学園にも、私たちの名前にも傷がつくわ。自主退学をお勧めするわ」うわぁ、桐原クレア先輩の声も頭の中に響いてくるぅ……。なんか横からそんなこと、言われそぉ。
「……大丈夫? くるみちゃん」
頭の中で色々と考えていたら、あまりにもヒドい顔をしていたみたいで、もみじちゃんが心配してくれた。ありがとうもみじちゃん……そしてさようなら。短い学園生活、楽しかったよ。
「もみじちゃん……私退学かも」
私は考えていたことをもみじちゃんとレオンちゃん、そして岡くんにも話した。
「はぁ? K4ってそんなことまで権限があるの? 私、ただのかっこいい四人組だと思ってた」
「私もついさっきまではそう思ってました……」レオンちゃん、ありがと。
「くるみちゃん、心配ないって。きっと怒ってるんじゃなくて、他の用事なんだよ」
ありがと、もみじちゃん。でもね、私他の用事で呼ばれるようなこと、なーんにもしていないんだ。
「大丈夫だって、退学はねぇよ! だからよ、何て言われたのか明日教えてくれ!」
岡くん……他人事と思って……気楽でいいよねぇ。
半分涙目になりながら、私は放課後、K4の会議室とやらに向かうのでした。はぁ、気が重い。
コンコン。
恐る恐る私はK4の会議室のドアをノックする。
「入りたまえ」
ううっ、中から黒崎カイ先輩の声がする。私は心臓の音が聞こえるくらいドキドキしながら、ドアを開けて部屋の中へ入った。
「しっ、失礼しまぁす……」
「来てくれたか。そこに座ってくれ」
K4の会議室。なんか普通の教室とかと違って置いてあるものが全部豪華なんですけど……。そしてやけに輝いていてまぶしいんですが……ここは王様のお部屋か何かですか?
私は先輩に言われるがまま、部屋の真ん中に置かれている応接用のソファに座った。うわぁ、ふかふか。何このソファ。超気持ちいいんですけど! そんな気持ちいいソファで私、退学宣告を受けちゃうんですね……。ああ、なんかフクザツ。
ずっと下を向いていると、コトリ、と音がして。見ると、目の前のテーブルにコーヒーが置かれていた。先輩が淹れてくれた……飲めってこと? はっ、飲んだら記憶を消される的な? 私が身構えていると、先輩はふっと笑って私の反対にあるソファに座った。
――先輩って笑うんだ。
「なんか勘違いしているのかもしれないけど、俺は君をお客様として呼んだんだ。そんなに身構えないでくれ」
……は?
「それはどういう……私、退学じゃないんですか?」
「退学? それこそ何の話だ?」
私は、お昼ご飯のときの内容を先輩に話した。すると、
「はっはっは、被害妄想もほどほどにしてくれ! 君たちはK4を何だと思っているんだ!」
えーっと、クールな黒崎カイ先輩がこんなに笑ってくれるなんて。なんだかいい意味でイメージが崩れた感じ。でも先輩はすぐに笑うのをやめて、真面目な顔をして話し始めた。
「K4はもともと、生徒のみんなが規律正しく学園生活を送ることができるように作られた組織なんだ。簡単にいうと、生徒会と風紀委員を合わせたようなもの、かな」
「え、じゃあ私の退学は……」
「そんな権限、K4にあるわけない」
なぁぁんだぁぁぁ、よかったぁ。私は気が抜けてソファにずぶずぶと沈み込んでしまった。でも、そしたらどうして――
「あの先輩」
「どうした」
「だとしたら、私はどうしてここに呼ばれたんですか?」
何気なく言ったつもりだったんだけど、先輩の顔が急に怖くなった。えっ、何か気に触るようなこと言ったかな? 言ってないよね?
先輩はソファから立ち上がり、窓際に移動した。そして部屋のカーテンを全て閉めて、私の前に戻ってきた。
え、え、何? 私これから何をされてしまうの?
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