第2話
「よーし、全員揃ったな。始めるぞ!」
担任のクマ先生がチームを割り振っていく。クマ先生っていうのは、もちろん本名ではなくて、見た目がクマみたいに大きくて、毛むくじゃらだからみんながそう呼んでいるの。馬鹿にしているわけじゃないよ、みんなクマ先生のこと大好きなんだ。
ダンジョンでは1チーム四人で行動することになっている。私は、さっき廊下で声をかけてくれた進藤もみじちゃんと、中村レオンちゃん、そして、岡ユウスケくんと同じチームになった。ちょっと三人を紹介するね。
最後に
でもね、みんななんだか強そう。よし、私がしっかりサポートするからね!
「おい
岡くんがそう言って私のカバンを見た。確かに、中身がパンパンでダンジョンには邪魔そうに見えるよね。でも――。
「この中には、魔力の回復薬とか、傷薬とか、冒険に必要なものがたくさん入っているんだ。もし岡くんが怪我したときは、私が魔法と、この薬を使ってバッチリ治してあげるからさ。一緒に頑張ろうね! 私、戦うのは苦手だけど、精一杯サポートするから!」
「お、おお」と、岡くんも納得してくれたみたい。んー、まあ鞄の中身の半分以上はイラストを描くためのスケッチブックとかペンとかなんだけど……これも冒険に必要なものだから嘘はついていないよね。だって私の心の支えだもん。
そんな話をしていたら、クマ先生が。
「それじゃ、今日は地下一階の出口までチームで行動すること! 危なくなったり、道に迷ったりしたら魔法で先生を呼べよ! って、地下一階だから罠もないし、レベルの低い魔物しか出てこないけどな!」
「はーい!」
って感じで、私たちのチーム、順調に出口を目指していたはずなんだけど――。
「おいおいおい、こんな敵の数聞いてねぇって!」
岡くんが剣を振りまくる。レオンちゃんももみじちゃんも魔法で敵と戦っている。私は……みんなの少し後ろで回復魔法の準備をしている。ちょっと地下一階の割に敵が多すぎるんじゃない? しかも普通、こんなにいっぺんに現れる? っていうくらい敵がいるんだけど。もしかしてこれって危ない状況なんじゃないの?
「くるみちゃん! 後ろ!」
もみじちゃんに言われて後ろを振り返ると、そこにも新しい敵がいた。「あっ、ヤバ!」何もできないまま、私は思わず目を閉じた。
「……? あれ?」
目をつぶったまんまで、私の目の前は真っ暗だったけど、あたりがしーんと静かになった。あ、私もしかして死んじゃった? 授業中に、しかもダンジョンの一階で。みんなもいたのに。パパママ、ごめんなさい。私、立派な治癒師になる前に死んじゃった……って、全然痛くないんですけど。意識もしっかりしているんですけど。
おそるおそる目を開けると、私の目の前に、剣を抜いて立っている誰かがいたのでした。
だ、誰?
岡くんは――剣を持ってびっくりした顔をしてこっちを見ている。
レオンちゃんともみじちゃんも――いつもは見たことのない顔をしている。目の前の人にめっちゃ驚いている的な顔。っていうか、私の目の前にいる人……誰?
「傷はないか?」
そう言って振り返ったのは……まさかまさか。
え、どうして先輩がこんなところに? かっこいいとか、うれしいとかすごいとか、たすけてくれてありがとうとか、そんなことよりも最初に思ったのはそれだった。
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