K4

まめいえ

第1話

「キャアァァァ! Kケイフォーよ! 向こうからK4がやってくるわ!」

「はぁ、尊い! 見ているだけで幸せ!」

「黒崎カイ様、今日もかっこいいわぁ!」

「ま、眩しすぎて近寄れない!」

 廊下の向こうから、圧倒的な存在感を放つ四人が横並びになって歩いてくる。可愛かわい学園高潔なる黒薔薇の騎士団、通称K4と呼ばれている先輩方。四人ともみんな剣術と魔法に長けていて、とってもかっこいいの。廊下を歩いているだけで、ご覧の通り。みんなキャーキャー言って大騒ぎになっちゃうんだ。確かにかっこいいし、素敵な先輩方だけど……正直言って、私には無縁の存在だよね。はるかはるか遠くにいる、憧れよりも上の存在的な?

 K4っていうのは、「K愛学園」「K潔なる」「K薔薇の」「K士団」の頭文字から付けられた名前だって聞いたことがある。でもある友達は「四人の名前の頭文字からつけられたんだ」だ、ともいっていた。

 確かに、クールでかっこいい炎使いの「黒崎くろさきカイ」先輩。

 K4の中で唯一の女性、とっても美人で仕草もお嬢様な「桐原きりはらクレア」先輩。

 ちょっと垂れ目で優しそうな雰囲気の「海堂かいどうキョウ」先輩。

 そして、褐色の肌が印象的な、体の大きな「剣持けんもちコーエン」先輩。

 確かに、全員イニシャルが「K.K」なんだよね。だからK4と呼ばれているっていうのも納得できる。だけど、名前がみんな「K.K」だなんて、出来過ぎな気もするんだけど……。

 でもさ「K崎」「Kイ様」「K日も」「Kっこいい!」毎日のようにみんなが言っているこのセリフもある意味、K4だよね。もうなんか何でもありな気がする。

 そんなことを思っていると、私の目の前をK4の先輩方が通り過ぎて行く。あれ、一瞬、黒崎カイ先輩が私を見た気がしたけど……気のせいだよね。私、というか私の方、といったほうが正しいかもしれないけど。

「きゃあああっ! カイ様が、カイ様が私のことを見たわぁ!」

 私の後ろにいた他の女の子が顔を真っ赤にして、両手で頬を押さえている。その隣の子は嬉しすぎて気絶しそうになっていた。

 だよね、何の接点もない私を見るなんてありえないし。おおかた、後ろの女の子が何かしらのアピールをしていたのかも。

 はあ、私もK4の先輩方のように……とまではいかないけど、立派な治癒師になれるように勉強をがんばらなくっちゃ!


 私の名前は小岩井こいわいくるみ。可愛学園中等部の1年生。

 この学園では剣や魔法の勉強をして、冒険者になるためにみんながんばっているんだ。私は冒険者の中でも、治癒師になりたくてこの学園に入学したの。パパもママも治癒師をしていて、小さな村で冒険者のみんなの手助けをしているんだ。以前パパは「僕たちは戦うことは得意じゃないけれど、こうしてみんなの役に立てていることが嬉しいんだよ」って話してくれた。ママもそれを聞いてうんうんとうなづいていたのを覚えている。結構前の話だけど、いまだに心の中に残っているんだ。そんな二人の姿を見て、わたしも父や母のようになりたいなと思ったの。

 だけど、いざ入学してみるとみんなレベルの高さにびっくり。入学前から剣の基礎が出来上がっている子がいたり、すでに初級魔法を習得し終えている子も……。そういう子が大勢だったんだ。それに比べて私が使えるのは初級の治癒魔法だけ。何度も心が挫けそうになったけど、その度に私はカバンにぶら下げてある「サーシャちゃん」のぬいぐるみを握りしめては心を奮い立たせているの。

 ああ、「サーシャちゃん」というのは私が好きなアニメ「最弱勇者」の中に出てくる、魔王なのに可愛い女の子という設定のキャラクター。好きが高じて自分でイラストを描いたり、ぬいぐるみなどのグッズまで自作するようになっちゃったんだ。実は昔から絵を描いたり、何かを作ったりするのが好きで、今でも大切な趣味として続けているの。

「おーい、くるみちゃん! 次の授業、地下のダンジョンで実地演習だよ! 早く早く!」

 K4の先輩方が通り過ぎた廊下の方で、同じクラスの進藤もみじちゃんが私に手を振っている。そうだった、今日はクラスのメンバーでチームを組んで地下のダンジョンに潜るんだった! 私は急いで準備を済ませて、地下のダンジョンの入り口へと急いだ。

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