第30話 新たな装備を買ってみた
市場に向かった俺達は、魔術関連の装飾品を見て回る。
迷宮に潜る前に、新たな装備を買っておこうと思ったのだ。
いくつかの店を巡りながら、俺の要望に合いそうな品を探す。
優先事項としては、やはり安価なものがいい。
特定の属性用に作られた商品は高めなので、今回の候補からは外しておく。
そういった装備は効果が大きく、需要もあるのだ。
俺には既に全属性用の指輪があるため、属性を意識した商品はあまり欲しくない。
だから俺が狙うのは、属性が関係ない魔道具である。
分類としては防壁の指輪と同系統だ。
魔力を充填する構造があれば十分であった。
むしろ、その機能がなければいらない。
あまり深く考えず、俺は魔力充填と価格だけに注目して品を選ぶ。
そうして手に入ったのは、二種類の装備だった。
一つ目は光源の指輪だ。
魔力で発光し、周囲を照らしてくれるらしい。
暗所で行動するための道具だそうだ。
手を塞がずに灯りを確保できるのは便利である。
しかも松明やランタンと違って、水中でも問題なく使えるのが良い。
微弱ながら魔術の闇を払う効果もあるらしく、あって困らない一品といったところか。
二つ目は怪力の腕輪である。
充填した魔力を消費することで、着用者の膂力を瞬間的に向上させる効果を持つ。
これは単純に強い。
剣士の俺が恩恵を感じる場面は多いだろう。
安物なので劇的な変化は期待できないものの、心強い装備には違いない。
力が物を言う戦いは決して少なくないのだ。
市場での買い物を済ませた俺達は、続いてギルドへと向かう。
指輪と腕輪を見たビビが不思議そうに訊く。
「それが強くなる手段なの?」
「ああ、そうだ。使い方次第だけどな」
どちらも迷宮探索で役に立ちそうだが、本命は別の使い道である。
これらに充填した魔力を術の行使に割くのだ。
そのため光源や怪力といった効果よりも、魔力を内包する機能を重視している。
俺はトロール戦で属性付与を発動させた。
あれはかなり強力だったが、中級魔術なので素の魔力量では使うことができない。
そこで指輪に充填した魔力を利用する。
回数制限付きながらも、本来なら発動できない術を行使できるのだ。
俺は魔力操作がそこそこ上手い。
鍛練時に判明したが、要領の良いビビよりもさらに上なのだ。
ここれでも器用貧乏が発揮されているらしい。
魔術方面に関しては、その数少ない特性を活かすことにした。
基本は全属性の初級魔術を扱って、決定打として中級魔術に頼る。
俺が高威力の攻撃を放てるだけで戦略の幅が大きく広がる。
過信は禁物だが悪くない案だろう。
ギルドに到着した俺達は武具屋へと赴く。
そこで店主に相談し、追加の装飾品を買うことにした。
ここなら掘り出し物があるのではないかと思ったのである。
案の定、店主は要望に合った品を見せてくれた。
それは空気中の魔力を蓄える首飾りだった。
銀の鎖に青い宝石が付いており、まさに俺の求める性能である。
かなり高価だったが、他の冒険者に買われても困る。
俺はあまり悩むことなくその場で購入した。
店主が満足そうにしていたのが印象的である。
俺達が順調に装備を揃えているのが嬉しいのだろう。
以前、冒険者の成長を見守るのが生き甲斐と呟いていたので間違っていない。
今回の買い物でまた財布が寂しくなった。
必要経費ではあるのだが、なんとも言えない気持ちになってしまう。
まあ、これも戦力上昇に繋がっているのだ。
使った分をしっかり稼げばいい話である。
ギルドの掲示板を見る最中、俺はビビに謝った。
「俺の買い物ばかりですまない。次にまとまった金が入ったら、ビビの装備を強化しよう」
「じゃあ、がんばらないとね」
「そうだな。何か希望はあるか」
「まだないから考えておく」
「分かった」
数枚の依頼用紙を確認しつつ、俺はビビの装備について考える。
やはり優先すべきは武器だろうか。
今は魔物から手に入れた剣を使い潰している。
別にそれでも困らないが、しっかりとした武器があると戦いが変わってくるのも事実だ。
やはり風属性の触媒としても使える魔術武器が一番だと思う。
ビビの戦い方に合った物をどうにか手に入れたい。
色々な策を凝らして戦う俺と異なり、ビビは単純明快な魔術剣士だ。
装備品の質が上がった分だけ実力が補強される。
ただ、魔術武器となると相応の価格帯になってくれると思うので、今のうちに貯金しなければならない。
俺は十分に買い揃えたから、次はビビのために頑張る所存である。
その後、俺達は迷宮へと移動した。
今日は新たな装飾品の効果の検証をしつつ、下の階層まで行って金を稼ぐのが目的だ。
俺もビビも強くなるための気力に満ちている。
ここから数日は潜り続けるつもりで挑むつもりだった。
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