第15話 基礎知識を学んでみた
翌朝、疲労感を覚えながら目覚めた俺は、ビビと共に身体を洗う。
それから朝食を食べて勉強を開始した。
椅子に腰かけて二人で同じ魔術書を開く。
本当は少し休みたい気持ちがあるが、そこはぐっと堪えて頑張ることにする。
ビビもやる気満々なのだ。
俺が水を差すような真似はしては台無しになる。
ここは彼女を後押しする立場にならないといけない。
資金は十分にあるため、急いで仕事をする必要もなかった。
当分は怠惰に過ごしても問題ない。
やはり迷宮で大きく当たると暮らしが豊かになる。
一時的なものに過ぎないにしろ、今はありがたかった。
ビビと話し合った結果、数日間は魔術の学習に専念するつもりである。
それからは冒険者の仕事をこなしつつ、空き時間に勉強する予定だ。
残念ながら魔術ばかりに打ち込める立場ではない。
座学ばかりでは戦闘の腕が鈍る恐れもあった。
資金面の余裕があるとしても、ずっと勉強ばかりとはいかないのだった。
その日は昼まで休まず魔術書に没頭する。
何冊か読んでみて俺とビビが着目したのは、属性に関して記された一冊だ。
内容が分かりやすい上、興味を引く内容だったのである。
魔術には様々な属性が存在する。
これを知っているかどうかで天地の差がある。
件の魔術書はそのような書き出しで始まっており、最初は大げさだと思った。
しかし、読み進めるうちに誇張表現ではなかったことを理解する。
魔術行使において、属性に関する要素は大きく分けて三つに分類される。
一つ目は魔術の属性。
二つ目は術師の属性。
三つ目は触媒の属性。
これらが噛み合うことで最大の効果を発揮するのだ。
ちなみに触媒とは主に指輪や杖といった補助具を差す。
俺の持つ防壁の指輪は、術師の属性を無視して発動する仕組みらしい。
魔道具は基礎から外れた分野みたいなので、今は深く触れずに流す。
この段階で色々と調べ始めると混乱しそうなのだ。
例外的な領域は、もっと知識が定着してからがいいだろう。
話を戻すと、三つの要素は同じ属性で揃えるのが一般的らしい。
大半の魔術師は、得意な系統の術を重点的に習得する。
手広く習得することも可能だが、属性の相性的に効力が落ちてしまう場合がある。
火属性の適性を持つ術師が、水属性を覚えるようなものだった。
努力でどうにもならない部分はあり、それでも特定の属性を扱いたい場合は魔道具に頼ることになるという。
自分の属性に左右されない方法で魔術を行使するわけだ。
(漠然と知っていたことも多いが、やはり参考になるな。魔術が使えるかどうかは抜きにして読んでおいてよかった)
俺は魔術書をめくりながら頷く。
興味深い内容が多く、読んでいて飽きることはない。
それに、こういった時の発見が後々になって命を救うことだってある。
意外と馬鹿にできないものなのだ。
数度の実体験を通じて、俺は知識や情報の偉大さを知っている。
これで魔術の基礎はなんとなく分かった。
その上でやらねばならないことがある。
(自分の属性を知っておかないと、これから困ることが多そうだ)
属性によって色々と勝手が異なるらしい。
学ぶ内容にも大きく関わるので、早めに明らかにすべきだろう。
それに、何の属性が得意なのか純粋に気になる。
部屋にこもって書物を読み続けるのも疲れたので、気晴らしに外出したかった。
俺は椅子から勢いよく立ち上がる。
ベッドで横になって魔術書を読み耽っていたビビが顔を上げた。
着替え始めた俺はビビに告げる。
「ギルドに行くぞ。俺達の属性を調べよう」
「どうしてギルドなの」
「有料で調べてくれる設備があるんだ。他で頼むより安い上に信頼できる」
冒険者ギルドは大抵の設備が整っている。
金さえあれば何でも揃うようになっているのだ。
専門的なものを求め始めるとその限りでもないが、属性の検査くらいは簡単にできる。
魔術師志望の新人が検査を頼む光景を何度か見かけたので間違いない。
(まさか自分の属性を調べる日が来るなんて思わなかったな)
外出の支度をする俺は、しみじみと思う。
今までは魔術を使うつもりがなかったので、検査するという発想自体がなかった。
意味のない属性を知ったところで、何の利点もないと考えていた。
金がかかるという点も大きい。
もしかすると、今の俺はビビよりも浮足立っているかもしれない。
少し気恥ずかったが、その感情を否定することはできなかった。
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