音楽家のおしごと

ミュージシャンなんてそんな大それた仕事なんかではないぞよ

世の中、音楽に興味のある人よりない人の方が圧倒的に多いんだぜ

ていうかみんながみんな有名人になりたいわけじゃないし


スウェーデンは

どんな人であっても最低限の生活を送れて

それ以上を望むならそれは自己責任で

という社会らしい


にわかには信じがたいが、もしそれが事実なら、

そこはなんという天国なのでしょう


だってそのシステムなら

何にもできない無能な人間も

誰にも何も責められず穏やかに生きていける

なんという地上の楽園


俺だってたまたま音楽ができたからよかったようなものの

そうじゃなければ真っ暗闇

ていうかミュージシャンなんて博打な水商売だ

いつ真っ暗闇になるかわかったもんじゃない


だいたい音楽ができるといえば一見聞こえはいいけれど

よくよく考えてみればそれは単に需要供給の話で

つまりたまたま運がよかっただけのことで

人々から望まれなくなった時、私は無価値になるのだ


もっともそれはどんな仕事でも同じだけど

“仕事”ってそういうものだもの


だけれど俺は森羅万象に感謝している

音楽とはなんと楽な仕事か

だってやりたくてやってるんだもの

こんなものが仕事だと認められる世の中でとっても幸せだ


スウェーデンは

どんな人であっても最低限の生活を送れて

それ以上を望むならそれは自己責任で

という社会らしい


にわかには信じがたいが

スウェーデンでもラストニアでもなんでもいい

気楽にのんびり生きていきたい

歌って踊ってノーリスクで過ごしたい


人生は容易く語れるものじゃない

なのに俺はのほほんと音楽にしている

果てしなき罪悪感 でもそれが俺の仕事だから

“わかりにくいをわかりやすく”


音楽を虚しいことだとは

俺は思わない

たとえいつか誰にも望まれなくなっても

だって楽しいんだもん

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